Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.56
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2012  56
学会印象記
第17回日本緩和医療学会学術大会学会印象記
福岡大学病院薬剤部・緩和ケアチーム  瀬 久光
 第17回日本緩和医療学会学術大会が、2012年6月22日、23日の2日間にわたり、平清盛ゆかりの地、神戸で盛大に開催された。メインテーマは、「ひろく ふかく たかく」であり、大会長講演では、それぞれ深いメッセージが込められていた。筆者は参加を経て、 “ひろく”知識を取り入れ、患者・家族を含めたチーム医療の中で最善のケアをすすめること、ジェネラリストの知識・態度のうえにスペシャリストとして“ふかく”探究すること、常にスキルアップにつなげる“たかく”目標を抱き、患者のQOL向上に寄与する姿勢であることと考察した。プログラム構成は、アクセプトされる論文の書き方−Best of Palliative Care Research−を含め本学会企画4演題が新たに設けられ、ガイドラインに基づく標準的治療に関するセッションなど、明日からの業務に即展開できる充実した内容であった。
 非がん疾患の緩和ケアのシンポジウムでは、心不全終末期、ALS、訪問看護師による在宅関連、緩和ケアコンサルテーション活動などが紹介された。米国では、ICUと緩和ケアが統合する動きにあり、患者・家族に対して疾患の改善とその後の緩和ケアのニーズが高まりつつある。具体的には、痛みを含む症状コントロール、家族ケアなどが主軸となり、現状ではコミュニケーション不足により、患者・家族がICU治療目標を把握できない一方で、医療者と患者側との狭間で心理面の葛藤やストレスが否めない。緩和ケアの介入は、双方のQOL低下を抑止し、医療費減額にも波及する一面もあり、Advance Care PlanningやDeath Educationなどの普及の契機になり得る。また、ALSでは患者自身の意思確認が困難であるため、倫理的にも結論にたどり着くのも隘路である。失われていく機能への惜別を勘案し、過去(Narrativeを共有)、現在(微弱なサインも見逃さない)、未来(最善の利益)を話し合う環境づくりが必須となる。ここでもメインテーマを裏付ける要素が集積しており、参加を通じてWHOが提唱する「がん」に限定しない、すべての患者を対象とする緩和ケアを目指していきたい。

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