Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.56
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2012  56
Journal Club
救急外来での緩和ケアの未来は?
聖隷三方原病院 ホスピス科  鄭 陽

Grudzen CR, Richardson LD, Hopper SS, Ortiz JM, Whang C, Morrison RS.Does palliative care have a future in the emergency department? Discussions with attending emergency physicians.J Pain Symptom Manage. 2012 Jan;43(1):1-9.

【目的】
 救急医療の現場での緩和ケアサービスについての救急医の考え(意識)や信念を調査した。
【方法】
 3つの形態の病院(3次医療センター、公立病院、地域病院)に勤務している救急指導医を対象とした。対象者を3つのグループにわけ、それぞれのグループにおいて司会者の進行のもと用意されたガイドに沿って90分のテレフォンカンファレンスを行った。ガイド内には、重篤疾患の高齢者における、意思決定、コミュニケーション、緩和ケアの役割、という要素が盛り込まれた2症例のシナリオがあり、そこから議論を発展させた。録音された議論は文章に書き起こされ、グラウンデットセオリーを用いてテーマ分類を行った。
【結果】
 20名の救急指導医(平均年齢は41歳、40%が女性、経験年数の中央値9年)が参加した。救急医は、自らの仕事が患者と家族を結びつけられる、不安を鎮める、何らかの教育や説明をする、ということにやりがいを感じていた。一方、フラストレーションを感じることは、認知障害や家庭内対立で前述のやりがいが達成されないとき、「無駄な医療」をしていると感じるとき、であった。また、全員が患者は知る権利があると強く思っていた。
症例シナリオへの反応は次の5つのテーマに分類された。(1) limited understanding and knowledge of palliative care;知識や教育の不足により、終末期の微妙な状況へ対応する準備ができないという自らの限界を感じていた。一方、それがトレーニングによってスキルを上げようという意欲やコンサルテーションへのきっかけになる。(2) fixed view of the role of the emergency provider;救急外来で初対面となる患者・家族が多く、ゴール設定は救急医自らの役割ではなく事前にプライマリケア医が行っておくべきであると考えている救急医もいた。また、患者や家族から積極的なケアを求められていると感じている救急医もいた。 (3) complexity inherent in decision making;時間的・空間的制限がある救急外来では、複雑な意思決定を進めていくことに専念ができない。また、時に意識障害のある患者では元来の本人の希望と家族の希望との対立があることを指摘していた。(4) practice of defensive medicine;救急医が患者にとって正しいと思う(処置の差し控えも含めた)医療行為と医療訴訟から身を守ること間での葛藤がある。(5) logistical challenges;緩和ケアが入ることでの救急ケアの中断が必要になる懸念や、他患者の対応が優先される場面での難しさ、緩和ケアチームが夜間や週末に利用できない不便さ、が指摘されていた。
【結論】
 救急医は、自らの緩和ケアの知識を高めることや、より複雑な症例において緩和ケアコンサルテーションを利用することに多大な有用性を認めている。
【コメント】
 本研究では、救急医の立場から知識向上やコンサルテーションのタイミングを知ることが大切だということが分かった。それに加えて、救急医と患者のコミュニケーション自体も大事なのではないかというように思われる。また、単純に救急現場に緩和ケアサービスが出向いたとしても、面識のない人間が急に赴いて実際に難しい意思決定を促すことは難しいのではないかと予想される。救急医と患者あるいは家族との話し合いの場に同席するなどし、意思決定の支援を行うというのが望ましいかもしれない。

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