Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.56
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2012  56
Journal Club
入院にて緩和ケアを受けている患者の家族への支援
:心理教育的介入プログラムの前後比較研究
東北大学大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野
清水 恵

Hudson PL, Lobb EA, Thomas K, Zordan RD, Trauer T, Quinn K, Williams A, Summers M.Psycho-educational group intervention for family caregivers of hospitalized palliative care patients: pilot study.J Palliat Med. 2012 Mar;15(3):277-81.

【背景・目的】
 緩和ケアを受けている患者の家族介護者の多くは、患者の死と向き合いながら、介護やケアによる負担や、経済的問題などを抱え、身体的・精神的に健康な状態を保つことが困難である。また、介護役割を担ううえで必要な情報などの多くのニーズが満たされておらず、サポートが必要である。本研究では、緩和ケアを受けている入院患者の家族介護者を対象に、家族介護者が患者のサポート役となる準備をするための心理教育的介入プログラムの有効性を検討する。
【方法】
 入院中の緩和ケア患者の家族介護者への心理教育的介入プログラムの前後比較介入試験として実施した。介入は、主にガイドブックを使用し5つのトピック1)緩和ケアとは何か、2)家族介護者の典型的な役割 3)介護者の助けとなるサポートサービスの利用法 4)将来へ準備 5)介護者のセルフケア方法)について1.5時間のセッションを1回行った。必要であれば他の家族と連絡をとれるよう情報提供をした。セッション後には、ケアを担当している医療者と、彼らのニーズについて話し合いが持てるような機会の設定を行った。介入の評価として、介入前後に、介護者のニーズの充足度(Family inventory of need) 、介護役割の準備状態(Preparedness for care-giving scale) 、介護役割の達成感(Caregiver competence scale)、一般的な健康度(General healthcare questionnaire) の評価を自記式質問紙にて実施した。
【結果】
 リクルートの対象となった1265人の家族介護者のうち、126人が参加した。うち、107人(84.9%)が介入後の評価を完了した。介入後には、介護役割の準備状態が有意に改善(P<0.001; effect size 0.43)し、介護者の充足されていないニーズが有意に減少していた(P=0.014; effect size 0.22)。精神的well-beingや介護役割の達成感への介入の有意な効果は見られなかった。
【考察・結論】
 入院患者の家族介護者に対する今回の心理教育的介入プログラムは実施可能であり、効果的であると考えられる。しかし、対象とした家族介護者のうち、介入への参加者の割合は低く、方法論としての限界が残る。今後は、介入―コントロール比較試験を実施し、この介入の効果のさらなる検討が必要である。
【コメント】
 緩和ケア患者の家族への支援についての介入研究はいまだに少なく、エビデンスのある効果が実証されている支援はほとんど確立していないのが現状である。しかし、Hudson先生のように、家族介護者についての多くの重要な研究を行ってきた研究者が推進しているこのプロジェクトには関心と期待が大きい。特に、今回の心理教育的介入プログラムのように、たった1回のセッションによる効果が示唆されたことは、医療者にとっても家族介護者にとっても実施可能性が高く、重要な支援方法の確立へとつながることが考えられる。今後、介入―コントロール比較試験により効果が実証されることを期待するとともに、日本においても、このような効果的で実施可能な介入についての研究を推進していく必要がある。

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