Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.56
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2012  56
Journal Club
がん性疼痛に対する心理社会的介入のメタアナリシス
東北大学大学院緩和ケア看護学分野  佐藤 一樹

Sheinfeld Gorin S, Krebs P, Badr H, Janke EA, Jim HS, Spring B, Mohr DC, Berendsen MA, Jacobsen PB.Meta-analysis of psychosocial interventions to reduce pain in patients with cancer.J Clin Oncol. 2012 Feb 10;30(5):539-47.

【背景】
 疼痛はがん患者が経験する症状のなかで、もっとも頻度が高く、つらく、恐れられる症状のひとつである。その治療には、薬物治療と心理社会的介入が推奨される(全米疼痛学会)。しかし、これまでのシステマティック・レビューは心理社会的介入の内容が限定的であるなど限界があった。本研究では、がん性疼痛に対する心理社会的介入効果の最新で、安定的で、包括的な推定を目的とした。
【方法】
 成人がん患者を対象とした疼痛に対する心理社会的介入に関する無作為化比較試験のメタアナリシスを行った。3組の調査者が独立に1681論文の抄録をレビューし、一致度を確認した。主要評価項目は疼痛の程度と疼痛による障害とし、介入効果の大きさは効果量Hedges gを算出した。
【結果】
 37試験42論文がメタアナリシスに適格であった。研究対象者(N=4199)の背景は、性別:女性66%、人種:白人72%、治療状況:がん治療中69%、診療の場:外来71%であった。心理社会的介入は、種類:スキル・トレーニング(認知行動療法、リラクゼーション、催眠など)48%、教育(症状のモニタリングや自己管理)50%、支持的表出的グループ療法2%、回数:平均6.5±11.8回、対象:個別90%、方法:対面76%、DVDなどメディア22%、印刷物20%、介入の場:自宅27%、外来73%であった。
 メタアナリシスの結果、疼痛の程度を評価した37試験の統合した効果量は0.34 (95% CI, 0.23 to 0.46, p<.001)、疼痛による障害を評価した4試験の統合した効果量は0.40 (95% CI, 0.21 to 0.60, p<.001)であった。介入効果の大きさは、介入の種類(p=.22)、場(p=.08)、介入回数(p=.76)、対象者の性別(p=.77)や人種(p=.50)の偏りなどで試験間の効果量に有意差はみられなかった。
【結論】
 がん性疼痛の程度や疼痛による障害に対して心理社会的介入は中程度の改善効果がある。がん性疼痛治療の集学的アプローチの一環として、質の高い心理社会的介入の系統的な提供が必要である。
【コメント】
 わが国のがん疼痛の薬物治療のガイドライン(日本緩和医療学会,2010)では、心理社会的介入について患者教育は含まれているが認知行動療法やリラクゼーションなどのスキル・トレーニングは含まれていない。がん性疼痛に対する心理社会的介入の効果は明らかであり、質の高い薬物療法の均てん化と併行して、今後は心理社会的介入を臨床実践に組み込む方略に関する議論が必要であろう。

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