Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.56
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2012  56
Journal Club
乳がん、結腸がん、肺がん、前立腺がん外来患者における
PMIを利用した疼痛治療の不適切さに関する前向き観察研究
東北大学大学院医学系研究科保健学専攻 緩和ケア看護学分野
宮下 光令

Fisch MJ, Lee JW, Weiss M, Wagner LI, Chang VT, Cella D, Manola JB, Minasian LM, McCaskill-Stevens W, Mendoza TR, Cleeland CS.Prospective, observational study of pain and analgesic prescribing in medical oncology outpatients with breast, colorectal, lung, or prostate cancer.J Clin Oncol. 2012 Jun 1;30(16):1980-8.

【目的】
 がん患者にとって疼痛は頻度が高い症状であるが、外来がん患者の疼痛マネジメントの状況はあまり分かっていない。
【方法】
 3123人の浸潤性の乳がん、結腸がん、肺がん、前立腺がんの外来患者が病気や治療のステージとは関係なく前向き研究に参加した。参加時と4〜5週後に疼痛、疼痛による機能障害、他の症状に関する25項目のアンケートに回答した。医療者が処方されている鎮痛薬を記録した。疼痛治療の適切さを評価するためにPMI(Pain Management Index)を計算した。
【結果】
 疼痛のリスクがある3023人の患者のうち2026人(67%)が初回時に疼痛を有するか鎮痛薬の処方を必要とした。その2026人の患者のうち、670人(33%)の鎮痛薬の治療は不適切であった。初回時と再診時で治療の不適切さは変わらなかった。多変量解析の結果、ヒスパニックでない白人では不適切な治療の割合はマイノリティの半分であった(OR=0.51, 95%CI 0.37-0.70, P=0.0029)。他の不適切な治療の関連要因はPSが良いこと、マイノリティが利用する病院で治療を受けていること、治療中でない非がん疾患を持っていることであった。
【結論】
 多くのこれらの外来がん患者は疼痛の問題に直面している。マイノリティの患者は疼痛治療が不適切である割合が2倍であった。しかも、その結果は1カ月後の再診時まで続いており、この問題の複雑さを示している。
【コメント】
 MD.Anderson Cancer CenterのCleelandらによる多施設研究である。PMIは疼痛の治療を鎮痛薬の処方状況によって評価するものである。たとえば強い疼痛を持つ患者が強オピオイドを処方されていない場合には不適切な治療となる。この方法には若干の批判もあるものの、世界的に広く用いられている方法であり、わが国でも単施設での測定結果が報告されている(Okuyama 2004, Uki 1998)。以前から米国ではPMIにより疼痛治療の不十分さが指摘されてきたものの本研究では大きな改善が見られておらず、外来における疼痛治療の困難さが示唆される。わが国では多施設のPMIの調査は行われておらず、全国的な疼痛治療の状況は不明である。わが国でも現状における疼痛の程度や治療の状況を把握する必要があると思われる。

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