Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.56
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2012  56
シンポジウム19
緩和ケアにおける倫理的問題
座長・報告  静岡県立静岡がんセンター 緩和医療科  大坂 巌
座長  公益財団法人 がん研究会 有明病院 看護部 がん看護専門看護師
濱口 恵子
 本シンポジウムでは、4名のシンポジストからのご講演と、ひとつの研究発表を受けてディスカッションを行っていただいた。岸和田市民病院の川島正裕先生からは、抗がん治療の中止を伝える医師の実際の苦悩と問題点を示された。新国内科医院の宇野さつき先生は、事例を通して患者の意思決定をどのように支援していくのかをわかりやすく解説していただいた。東京大学の清水哲郎先生は、biological lifeとbiographical lifeの違いを通して、倫理というものの考え方を解説していただいたが、「その方の人生にとって何ができるか」という視点が重要であるとの力強いメッセージが印象的であった。中京大学の稲葉一人先生は、医療従事者は法律を知っておいた方がよいが、法律だけでは患者は幸せにはなれないことを強調された。
 聖隷浜松病院の森雅紀先生から、医師に対する予後告知についてのアンケート調査の研究報告があった。予後告知に関する医師の考え方や実践は多様であり、告知後の医師の感情も様々であることを呈示していただいた。ディスカッションの中では、狭義の予後と広義の予後が含まれていることや、患者に対して「これからどうなる」ことを伝えていくことの重要性も討論された。
 NPOグループ・ネクサスの天野伸介先生には、患者としていかにつらい体験をされたか、医療従事者との関係性がいかに大切なものであるかを赤裸々に語っていただいた。天野先生のご発言は、参加者やシンポジストの先生方にとっても心に響くものであり、私たちがわすれてはならない大切なものを示していただけた。倫理的問題を考えることは、日々の臨床現場で「おやっ」と思うことをそのままにせず、患者・家族の思いや考えをよく聴き、良好なコミュニケーションのもとに、チームで考える姿勢が何よりも大切であることを伝えていただいたセッションであった。

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