Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.56
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2012  56
シンポジウム18
神経障害性疼痛のメカニズムと最新の治療
座長・報告  岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 麻酔・蘇生学  溝渕 知司
座長  KKR札幌医療センター 緩和ケア科  瀧川 千鶴子
 痛みのコントロールにおいて神経障害性(疼)痛 (Neuropathic pain以下NP)の診断や治療は難渋することが多い。近年日本でもNPの薬物療法ガイドラインが示されたが、そのメカニズムとがんによる神経障害性痛の治療の考え方を基礎と臨床の両方面から考えるシンポジウムが、6月23日(土)15:20〜17:05、ポートピアホール第5会場で「神経障害性疼痛のメカニズムと最新の治療」と題して行われた(シンポジウム18)。
 まず、一般的なNPのメカニズムを基礎研究の分野から山本達郎先生(熊本大学大学院生命科学研究部麻酔科学分野教授)に解説いただいた。山本先生はそのメカニズムは充分にはわかっていないとしながらも、痛みの種類で薬の効果は異なりアロディニアと断端痛の両方に効果があるのはモルヒネであるという研究成果などを示された。次に、安部睦美先生(松江市立病院診療部長兼緩和ケアセンター長)が、がんに関わるNPの診断と治療を診断アルゴリズムと治療のフローチャートを示しながら解説された。また、症例を提示され、その診断と治療を具体的に説明された。3番目のシンポジストとして登壇された薬剤師の久原幸さん(手稲渓仁会病院がん治療管理センター緩和ケア室緩和ケアチームマネージャー・緩和薬物療法認定薬剤師)は、NPの薬物療法が難しい原因は、ガイドラインが統一されていないことや使用する薬物の副作用が多いことなどが考えられると述べ、最新の文献やガイドラインを紹介しながら、がんの薬物療法のポイントを解説された。また、NNT(number needed to treat)の説明からエビデンスのある薬剤選択の考え方とがんの薬物療法時の相互作用の注意点などを非常に分かりやすくかつ論理的に説明された。関根龍一先生(亀田総合病院疼痛・緩和ケア科部長)は、米国での緩和医療での臨床経験も踏まえ、がんのNPは混合性痛が多く臨床研究も難しいためエビデンスが乏しいこと、オピオイドに抗うつ薬や抗けいれん薬を加えた場合、非がん性痛よりも鎮痛効果は少ないことなどを述べられた。また、米国では副作用の問題やオピオイドを優先するためいわゆる鎮痛補助薬の使用は少なくオピオイド中心にステロイドも活用することの利点を述べられた。次に、西江宏行先生(岡山大学病院麻酔科蘇生科助教)は、がんのNPに対するインターベンション治療に関し自験例と論文を提示しながら解説された。この中では特に、エコーガイド下神経ブロックの安全性や刺激療法、神経根へのステロイドの効果などの報告が紹介された。その後、薬物療法のコツが各演者から話され、最後に司会コメンテーターを務められた瀧川千鶴子先生(KKR札幌医療センター緩和ケア科部長)が、注意深い患者診察と診断の重要性を述べられるとともに、薬物療法としてオピオイドが優先、主体に対処されるのが好ましいであろうことを各シンポジストとともに確認され終了した。

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