Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.56
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2012  56
シンポジウム16
緩和ケアにおける介入研究のエビデンス〜飛躍のために〜
座長・報告  聖隷三方原病院 緩和支持治療科  森田 達也
座長  十和田市立中央病院  蘆野 吉和
 このセッションでは、まず、国際的な介入試験のエビデンスについて緩和医学領域、サイコオンコロジー領域について、それぞれ、聖隷三方原病院の森田氏、国立がん研究センター東病院の小川氏がレビューを行った。
 森田氏は、さらに、わが国では観察的研究、遺族調査などのサーベイランス、質的研究、地域介入研究などでは国際的にも主要な医学雑誌に掲載される質の高いエビデンスが蓄積されてきたが、薬物療法をはじめとする介入研究が十分に成功していないことを指摘した。一方、オーストラリアで進捗している緩和ケア領域の無作為比較試験を紹介し、国際的に緩和ケア領域でも質の高いエビデンスの蓄積は可能であり、患者に対してもっとも適切な治療を明らかにする責務があることを述べた。
 小川氏は、サイコオンコロジー領域の特に多職種協働モデルの実証研究を多く引用し、「緩和ケア」の一部として行われている多職種協働ケア(看護師によるせん妄予防など)のエビデンスの蓄積を明らかにした。
 次に、東京大学医学部附属病院の岩瀬氏、東北大学大学院の山口氏により、介入研究を実施するうえでの臨床研究の方法論として研究に携わる臨床家が共有するべき知識を紹介した。
 岩瀬氏はデータ管理学の立場から患者の安全を確保して臨床研究を実施するためにはヘルシンキ宣言を順守することが重要であり、そのためにはプロトコール審査委員会、効果安全評価委員会、データセンター、生物統計家を含む研究組織が不可欠であることを述べた。山口氏は生物統計学の立場から、臨床研究は医師、看護師、薬剤師など単一職種で行うことはできず、研究計画、実施、解析、解釈すべての段階を通して生物統計家がかかわることで適切な臨床研究が遂行できることを述べた。特に、不適切な研究計画のもとに取得されたデータはあとでどのように解析しようとしても対応できないことは座長も大いに共感するところであった。その後、手稲渓仁会病院の山口氏、東京厚生年金病院の金石氏が、昨年度の日本緩和医療学会の指定研究である、呼吸困難に対するオキシコドンとモルヒネの比較試験、オランザピンとメトクロプラミドの比較試験、を実施していくにあたって実際に苦労したなまなましい体験を共有した。両氏とも研究支援組織がないと研究計画の立案そのものが不可能であることを指摘した。セッション全体を通じて、「患者のために本当にいいことをしているか」を確認するためには、臨床と同じように、多職種チームであたることが必須であるとのメッセージが伝えられたと思う。あわせて、研究支援組織の維持インフラ整備が学会に求められている。わが国において、「患者の苦しみを最小限にするためにもっとも適切なことをしているのか」が明らかとなる臨床研究が介入試験にも展開していくことを願う。

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