Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.56
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2012  56
シンポジウム15
「緩和ケア」を伝える難しさ
座長・報告  兵庫県立大学 看護学部  内布 敦子
座長  広島県緩和ケア支援センター  本家 好文
 本学会は厚生労働省委託事業として「緩和ケアに関する国民への普及啓発」に5年間取り組んできた。特に国が掲げる「がんと診断された時からの緩和ケア」は、がん治療に携わる医師の協力なしには実現困難な課題である。このシンポジウムは、緩和ケア普及の現状を知り、患者・家族を含む様々な立場の方々から、さらなる普及戦略のヒントをいただくことを目的として企画された。
 はじめに本学会の緩和ケア普及啓発作業部会(オレンジバルーンプロジェクト:OBP)で活動されている川崎優子氏から普及啓発の状況が報告された。「緩和ケア」という言葉の認知度は依然として低いままであるが、医師などの医療職から得られる情報への信頼度は高く、医療者の介在した普及活動は一つの戦略であると述べた。松本陽子氏は、患者を対象とした調査や事例をもとに、患者や家族が緩和ケアにたどりつけるだけの情報を得ていないこと、医療者が目の前の患者に何に困っているのかを尋ねることが重要だと述べた。川上祥子氏は、民間団体としてがんに関する情報の発信を行ってきた経験から、関心のない集団に緩和ケアを伝えるのは難しく、関心のある人は具体的な情報を求めていると述べた。
 その後4名の登壇者(明智龍男氏、大江裕一郎氏、馬場秀夫氏、岡本禎晃氏)を加え、緩和ケアの普及について精神科医、がん治療医、薬剤師の立場で意見を述べていただいた。早期がんで治癒可能な事例も増えており、診断時期に緩和ケアに関する情報が本当に必要なのかという疑問も発せられたが、一方でがんの診断をうけた集団の自殺や心疾患による死亡の相対危険度が増大するというデータも示された。麻薬については「ダメ・ゼッタイ」という国のキャンペーンの影響もあり、医療用麻薬使用への抵抗感があることも考慮して、患者が困っていることを医療者側から積極的に問い、適切に向き合うことの重要性を確認した。会場との討論のなかでは、医療者の中でも「緩和ケアの概念」の理解が異なっていること、結果として患者・家族に必要な情報が届いていないことが課題として認識された。

Close