Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.56
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2012  56
インターナショナルレクチャー2
早期からの緩和医療
座長・報告   岡山大学大学院 血液・腫瘍・呼吸器内科  谷本 光音
 転移性非小細胞肺がんは不治であり、呼吸困難などの症状が厳しいために終末期であっても積極的治療を受けることが多い。一方、診断後早期から緩和ケアを導入することで、生活の質(QOL)と終末期の転機が改善される可能性がある。これらの仮説を検証するため、演者はマサチューセッツ総合病院がんセンターで新たに診断を受けた転移性非小細胞肺がん患者151例を対象として、診断後早期緩和ケアのランダム化比較試験を行った結果を中心にご講演を行った。患者151名をがんの標準治療と緩和ケアともに行う群とがんの標準治療のみ行う群とに無作為に振り分け、主要転機はFACT-Lで測定したQOL、二次転機はHADSで測定した気分、受けた終末期医療、生存期間として、化学療法の利用と治療によるうつ状態の影響を調査分析した。
 12週目で測定したQOLは、早期緩和ケア群で有意に高く(p=.03)、抑うつ症状を有する患者数は標準治療のみの群は早期緩和ケア群の2倍であった(p=.01)。終末期に積極的治療を受けた患者数は早期緩和ケア群の方が有意に少ない(p=.05)にもかかわらず、生存期間の中央値は早期緩和ケア群で有意に長かった(8.9か月 対 11.6か月、p=.02)。早期緩和ケア群では明らかに受けた化学療法のコース数が少なくはなかったが、終末期には早く治療を中止する傾向があった。早期緩和ケア群ではうつ症状が明らかに改善したが、それはうつ症状の治療によるものではなかった。これらの結果から、演者は新たに転移性非小細胞肺がんと診断された患者において、早期緩和ケアによってQOLと終末期医療の質の改善が明らかに認められ、これらに加えて生存期間の延長につながると結論づけた。
 ご講演後の討議では、緩和ケアの内容について詳しい情報を知りたいという質問が多く出たが、実際の内容については現在解析中であること、一部は最近のJCOに報告されていると返答された。うつ症状の改善が直接QOLの向上に繋がることを証明した最初の報告である。

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