Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.55
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2012  55
Journal Club

がん化学療法における副作用予防のための薬学的ケアの必要性
−デキサメタゾン投与における血糖値上昇の場合−

京都薬科大学臨床薬学教育研究センター  松村 千佳子

Matsumura C,Nakamura N,Aomatsu Y,Kuwata H,Takayama A,Yano Y.Need for pharmaceutical care during chemotherapy for prevention of side effects: example s of blood sugar monitoring in dexamethasone treatment.Palliative Care Research 2012; 7(1): 101-11.

【目的】
 がん化学療法の副作用である悪心・嘔吐は患者に多大な苦痛を与え、QOLの低下を引き起こすことが知られている。近年のがん化学療法の進展と治療期間の延長に伴い、抗がん剤だけでなく補助療法の長期使用により副作用発現の危険因子となる可能性がある。大腸がんのがん化学療法において、デキサメタゾン(DEX)の予防投与を長期に受けた患者が異常な血糖値の上昇を示す場合がある。本研究は、転移性大腸がん患者のDEXによる血糖値上昇について調査し、患者のQOLを改善するための薬学的ケアの重要性について考察することを目的とした。
【方法】
 2005年6月から2009年3月までに、がん化学療法を施行した大腸がん患者50名をDEXの投与群、非投与群の2群に分けてデータを後ろ向きに調査した。また血糖値上昇時の薬学的ケアについても調査した。
【結果】
 DEX投与群の患者30名の中で8名の患者に異常な血糖値の上昇(随時血糖値200mg/dL以上が2回以上と定義)がみられ、その中で3名は糖尿病と診断された。我々は患者との良好なコミュニケーションの中で異常な血糖値上昇を注意深くモニタリングしてきた。糖尿病と診断後、DEX投与量の減量の提案や血糖値上昇時にHbA1c測定の提案を行うことで早期に糖尿病と診断された。DEX非投与群の20名の患者は注目すべき血糖値上昇は見られなかった。
【考察】
 がん化学療法において、DEX投与を受けている患者にて血糖値上昇が見られることを確認した。継続的な血糖値の上昇は、直接および間接的に腫瘍細胞の増殖を刺激し再発のリスクを高める一因となる。DEX投与中は血糖値の異常な上昇を日常的にモニタリングし、適切な薬学的ケアを実践することにより糖尿病を早期発見し予防することができ、結果として患者のQOLや合併症の予防につながると考える。

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