Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.55
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2012  55
Journal Club

化学療法中の進行がん患者における精神症状発現の
スクリーニング法としてのHADSの有用性

九州大学大学院医学研究院病態修復内科  内野 慶太

Uchino K,Kusaba H,Kishimoto J,Mitsuyasu H,Kawasaki H,Baba E,Akashi K.Validation of Hospital Anxiety and Depression Scale as a screening tool for psychological distress in advanced cancer patients undergoing chemotherapy.Palliative Care Research 2011; 6(2): 150-7.

【背景】
 進行がん患者では疾患や治療に伴う精神的ストレスが大きく、精神症状を早期に発見し適切に介入を行ってQOLを向上させることが重要となる。一方で、専門的な精神医学的トレーニングを受けてない医療スタッフにとって、精神症状を適切に拾い上げ、精神医学的診断まで結びつけることは必ずしも容易ではない。Hospital Anxiety And Depression Scale(HADS)は精神症状発現のスクリーニング法として使用されるが、がん化学療法患者を対象とした報告は少ない。
【目的】
 がん化学療法患者における精神症状とHADS及びHADS以外の因子との関連性を解析し、精神症状診断のスクリーニング法としての有用性を検討する。
【方法】
 当科で化学療法を行った入院患者50 名を対象とし、解析因子は病歴より抽出し、精神医学的診断はDSM-Wに基づき診断した。各因子の精神科医診断への影響は多重ロジスティック回帰により解析した。
【結果】
 全患者のHADSスコアの平均は14.3点であった。精神医学的診断がついた22例(44%)の平均は20.0点、精神医学的診断のつかなかった28例(56%) の平均は9.67点で2群間に有意差を認めた(p<0.0001)。HADSのカットオフ値を17点とした場合、精神症状を抽出する感度73%、特異度82%であった。HADSとの併用で診断精度向上に関わる因子として「再発」が示唆された(P=0.0428)。
【結論】
 がん化学療法患者における精神症状発現のスクリーニングとしてHADSの有用性が示唆された。今後、精神科医や臨床心理士の介入をふまえた前向きな研究において、スクリーニング法の妥当性の検証が必要であると考える。

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