Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.55
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2012  55
Journal Club

腫瘍内科医のがん性疼痛治療に対する認識と実践:米国の全国調査

東北大学大学院緩和ケア看護学分野  佐藤 一樹

Breuer B, Fleishman SB, Cruciani RA, Portenoy RK. Medical oncologists' attitudes and practice in cancer pain management: a national survey. Journal of clinical oncology : offi cial journal of the American Society of Clinical Oncology. 2011;29(36):4769-75.

【背景】
 現在も多くのがん患者が疼痛を有し、ガイドラインに準じた適切な鎮痛治療の提供は少ない。腫瘍内科医のがん性疼痛治療に対する認識や実践に関する全国調査は、米国では1990年にECOGにより行われた調査以来ない。本研究の目的は、米国の腫瘍内科医の鎮痛治療に対する認識や実践の現状の評価とした。
【方法】
 対象者は、米国医師会に連絡先の登録があり、主または副専門領域が腫瘍内科で、実診療に従事し、連絡可能であった医師4427名のうち、4地域別に層別無作為抽出された2000名( 緩和ケア専門8名含む) とした。
 手順は自記式質問紙調査を行った。無回答者には3回督促し、1・2回目は完全版46項目の調査票を用い、3・4回目は短縮版の調査票(完全版46項目から無作為に抽出した25または27項目) を用いた。項目は、対象者背景、鎮痛治療に対する認識と実践であった。
【結果】
 腫瘍内科医650名(32%)から回答を得た(完全版354名・短縮版256 名)。
 がん性疼痛治療に対する認識や実践では(NRS (0-10) での評価の中央値)、腫瘍内科医のがん性疼痛治療の評価(7点) に対し、同僚と比較した自身のオピオイド処方の評価(3点) は低かった。がん性疼痛治療の障害は、医療者の不適切な疼痛アセスメント(6点)、患者がオピオイド服薬(6点) や疼痛の訴え(6点) をしたがらない、医師がオピオイドを処方したがらない(5点)、規制が過剰(4点) などの順であった。実践について、オピオイドは中程度以上のがん性疼痛治療の第一選択(8点)、がん性疼痛治療でのオピオイド投与は頓用より定期使用が効果的(9点)、神経障害性疼痛に対してオピオイドは鎮痛補助薬より効果が少ない(7点) と認識されていた。がん性疼痛治療に関する医学部教育と研修医教育の評価は3点と5点であり、過去3年間に受けたがん性疼痛に関する卒後継続教育は中央値で4時間であった。仮想症例を用いたがん性疼痛治療に関する問題の正答率は13%と40%であった。頻回に専門家に患者紹介する割合は疼痛治療14%、緩和ケア16%であった。
【結論】
 20年前と同様に、腫瘍内科医はがん性疼痛治療の障害や教育体制の不備を感じていることが示唆された。がん患者のためにも改善が必要である。
【コメント】
 米国の腫瘍内科医でもがん性疼痛治療に自信がなく、教育や専門家との連携が不十分である現状が示された。わが国では「がん診療に携わるすべての医師が緩和ケアについての基本的な知識を習得し、がん治療の初期段階から緩和ケアが提供される」ことを目標にPEACEプロジェクトによる教育研修が行われ、数万名の医師がすでに受講している。教育効果の評価研究も遂行中であり、その成果が期待される。

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