Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.55
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2012  55
Journal Club

転移を有する非小細胞性肺がんに対する早期からの
緩和ケアが化学療法とホスピスケアへの紹介に与える影響

東北大学大学院医学系研究科保健学専攻
緩和ケア看護学分野  宮下 光令

Greer JA,Pirl WF,Jackson VA,Muzikansky A,Lennes IT,Heist RS,Gallagher ER,Temel JS.Eff ect of Early Palliative Care on Chemotherapy Use and End-of-Life Care in Patients With Metastatic Non- Small-Cell Lung Cancer.J Clin Oncol.2012 1; 30(4): 394-400.

【目的】
 転移を有する非小細胞性肺がん患者に対して転移の診断時から緩和ケアを導入することがQOLを改善し生存期間を延長させることは既に報告されたとおりである(Temel et al,2011,N Engl J Med)。本論文は同じデータの二次解析として、早期からの緩和ケアが化学療法の頻度やタイミング、ホスピスケアへの紹介に関連するかを検証した。
【方法】
 二次解析のもとになったデータは2006年から2009年にがんセンターの外来で新たに転移が認められた151人の非小細胞性肺がんの患者に対する無作為化比較試験のデータである。患者は「標準ケア+早期からの緩和ケア」群と「標準ケア」群に無作為化された。評価項目は化学療法のレジメン数と種類、化学療法の頻度、タイミング、ホスピスケアへの紹介である。
【結果】
 2群で化学療法の総レジメン数は有意な違いはなかった。しかし、早期からの緩和ケア群では、死亡前60日間に化学療法を受けていた割合は有意に少なく(OR=0.47, P=0.05)、最後の経静脈的化学療法から死亡までの期間は有意に長く(64日vs41日,P=0.02)、7日以上ホスピスサービスのケアを受けた割合は有意に多かった(60%vs33%, P=0.004)。
【結論】
 今回の対象集団では両群とも化学療法を受けたレジメン数は同じであったのにも関わらず、早期からの緩和ケアを受けた群では緩和ケアの質を表す指標と言われている最後の化学療法およびホスピスへの紹介のタイミングを最適化した。
【コメント】
 Temelらによる早期からの緩和ケア介入の無作為化比較試験の二次解析である。Temelらの当初の論文では早期からの緩和ケア介入により終末期の積極的治療を抑制し、生存期間を延長することを示した。本論文は終末期の積極的治療のうち化学療法とホスピスサービスへの紹介に焦点を当てて検討したものである。早期からの緩和ケアにより副作用がコントロールされ、患者が多くのレジメンを受けられることにより生存期間が延長するという仮説のもとに分析を行ったがこれは否定された。今回の介入はAAHPMやNHPCOらによるNational Consensus Project for Quality Palliative Careに基づき症状の緩和とともに治療のゴール設定や意思決定をサポートするものであった。もう一つの仮説としてこの介入が副作用の強い抗がん治療の中止やホスピスへの紹介のタイミングの最適化をもたらすことであり、今回の結果はこの仮説が支持されたようである。本研究では介入群で死亡前の経静脈的化学療法は早期に中止になったが経口化学療法の使用割合は両群で違わなかった。セカンドライン・サードラインの化学療法までの期間は両群で有意に違わず、化学療法の詳細は明らかでないため最適化の意味には不明な点が残る。本研究は早期からの緩和ケア介入が治療期における症状緩和や抗がん治療の意思決定に関わることによりQOLだけでなく生存期間の利益ももたらす可能性があることを示しているが、抗がん治療の状況や医療システムなどにも左右されうると思われる。

Close