Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.55
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2012  55
Journal Club

ホスピス入院患者の血栓予防

聖隷三方原病院 ホスピス科  小田切 拓也

Gillon S,Noble S,Ward J,Lodge K,Nunn A,Koon S,Johnson MJ.Primary thromboprophylaxis for hospice inpatients: Who needs it? Palliat Med 2011; 25: 701-5.

【目的】
 ホスピスにおける血栓症予防が適切と考えられる患者の割合、入院時に血栓予防を行うかどうかの決定が記録されているか、静脈血栓症予防方針の施行が血栓予防診療や血栓予防の意思決定の記載に与えた影響を明らかにする。
【方法】
 英国の3つの独立型ホスピスにおいて、Pan-Birmingham Cancer Network(PBCN)ガイドラインによる血栓リスク評価法を紹介し、紹介前の診療について後ろ向きに300人、紹介後の診療について前向きに350人、に関して調査した。PBCNガイドラインに基づく血栓リスクのレベル、血栓予防の処方、血栓予防方針決定に関する記載、血栓予防の禁忌の有無、患者の背景情報が評価された。
【結果】
 後ろ向き観察期間の300名は、平均年齢70歳、男性48%、がん患者が86%であった。リスク評価では、76%が中等度、24%が高リスクに分類され、血栓予防の禁忌は43%の患者で認められた。20名(8.6%)の患者が一過性の高リスク群と考えられ、うち15名が血栓予防の禁忌を有していた。残りの11名のうち血栓予防を受けていたのは3名のみであった。この期間で血栓予防方針決定に関する記載があったのは全体の5%であった。前向き観察期間の350名は、平均年齢69.6歳、男性51%、がん患者が77%であった。リスク評価では、3.4%が低、80.8%が中等度、15.7%が高リスクに分類され、血栓予防の禁忌は40%の患者で認められた。30名(8.6%) の患者が一過性の高リスク群と考えられ、うち10名が血栓予防の禁忌を有していた。残りの20名のうち血栓予防を受けていたのは13名であった。この期間で血栓予防方針決定に関する記載があったのは全体の81%であった。
 血栓塞栓症かもしれない有症状者は、250人中14人だったが、血栓予防治療施行者はなく、血栓予防開始の基準を満たさない者が9人、血栓予防治療の禁忌者は5人だった。
【結論】
 静脈血栓症のリスク評価方法を紹介すると、ホスピス入院患者における血栓予防方針決定に関する記載は増えたが血栓予防を開始する患者は増えなかった。
【コメント】
 これまでの静脈血栓症に関する研究のoutcomeは無症状の血栓症発症や致死率などだが、ホスピスではいずれも妥当ではない。
 血栓症の2次予防はホスピスでも行っている場合があるが、ホスピス入院患者は大部分ADL改善が見込めず、血栓症の一次予防の適応になりづらいのが現状と考えられる。ホスピスの場面では、血栓症の一次予防に関して患者家族の満足度を高めることは難しく、患者家族と決断を共有するのは難しいかもしれない。

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