Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.55
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2012  55
Journal Club

入院進行がん患者における症状およびその強度と生存期間の関係

手稲渓仁会病院 緩和ケアチーム  山口 崇

Liu Y, Xi Q ,Xia S ,Zhuang L ,Zheng W ,Yu S. Association between symptoms and their severity with survival time in hospitalized patients with far advanced cancer. Palliat Med 2011; 25: 682-90. Liu Y, et al.

【目的】
 進行がん患者における各症状の頻度およびその強度を明らかにし、それらと生存期間の相関関係を評価する。
【方法】
 中国の一つのがんセンターに入院した進行がん患者を対象とした、前向きのコホート研究を行った。対象は2007年1月から09年5月の期間にリクルートされた。適格基準は、1)病理学的にがんの診断を受け、予後が3カ月未満と見積もられている、2) 18歳以上、3)中国語で会話可能、とした。明らかな認知機能障害および重大な精神疾患を持つ患者は除外された。評価項目は、医療者評価によるKarnofsky Performance Status (KPS)、患者自己評価によるMDASI中国語版(症状13項目、日常生活の障害6項目)が評価された。症状強度は0-4を症状なし〜軽度、5-10を中等度〜重度と分類した。また、生存期間は、リクルートされた日から死亡までの日数で測定された。
 背景情報、症状頻度、症状強度は記述統計により分析された。生存とリスク因子の関係に関しては、Cox hazard modelで分析された。総生存曲線はKaplan-Meier法を使用し描かれた。リスク因子の有無に伴う生存期間曲線の差は、log-rank試験で検定された。
【結果】
 256人の患者が解析対象となった。59%が男性で、年齢の中央値は57歳(18-83歳)であった。原発巣として多かったのは、肺(33.6%)、消化管(27%)、乳腺(7.4%)であった。KPSの中央値は30(10-60)であった。全体の生存期間中央値は49日(5-390日)であった。
 平均10個の症状を有しており、頻度が高いものは、倦怠感(98%)、食欲不振(97.7%)、睡眠障害(95.3%)、疼痛(92.2%)であった。中等度〜重度の症状の頻度が高かったのは、倦怠感(82.4%)、食欲不振(82.8%)、疼痛(55.1%)であった。
 単変量解析では、嘔気以外のすべての症状の存在が生存期間と有意に相関が認められた。一方、多変量解析では、倦怠感、呼吸困難、食欲不振、悲しい気持ち、の4症状のみが有意に生存期間短縮と相関していた。これら4症状の強度が中等度〜重度であった場合は、軽度以下であった場合と比較して生存期間が有意に短かった。
【結論】
 倦怠感、食欲不振、悲しい気持ち、呼吸困難の4症状の存在およびその強さが入院進行がん患者の生存期間の予測因子となる。
【コメント】
 本研究で、予後と関連する症状として示された呼吸困難・食欲不振は、日常臨床で使用される予後指標の項目にも含まれており、納得できる。しかし、悲しい気持ちに関しては十分な解釈が述べられておらず、臨床的に使用できる指標かは追試が必要に思う。また、これまでのいくつかの研究では倦怠感と予後は関連しないと報告されているが、それらの研究は治療中やもう少し全身状態が良い症例を対象としており、本研究ではより終末期に近い症例が対象となっており、終末期の倦怠感(いわゆる一次性倦怠感)は予後指標として使用できる可能性が示された。

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