Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.54
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2012  54
Journal Club

標準的治療を受けている進行非小細胞肺がん患者の自己の見通しを持つ体験

旭川医科大学 看護学科 がん看護学  濱田 珠美

Hamada T,Komatsu H. The lived experience of having outlook toward self of patients with advanced non-small cell lung cancer receiving standard therapy. Palliative Care Research 2011;6(2):222-6.

【目的】
 今日、進行非小細胞肺がんの標準的治療は、着実に延命を可能としてきた。しかし、その1年生存率は48〜60%に過ぎず、いのちを脅かす病気であり続けている。すなわち、標準的治療を受けながらも、将来に確かにあるという自己の見通しを持つことが困難になる。そこで、標準的治療を受けている進行非小細胞肺がん患者の自己の見通しを持つ体験について探求した。
【方法】
 都内の外来点滴センターに通院中の進行非小細胞肺がん患者に、非構造的面接法を行い、収集した語りのデータを逐語録として、現象学的心理学者 Colaizzi による次の方法に基づいた。1.逐語録をその全体の意味が理解できるまで、何度も繰り返し読む。見通しを持つことに関し、2.記述を抽出する。3.重要な記述から浮き上がる意味を系統立てる。この際、元のデータに忠実に創造的に洞察する。4.3. までを繰り返し、浮き上がった意味を幾つかのテーマへと系統立てる。5.これまでの分析結果をふさわしい徹底した記述へと統合する。6.その記述をその根本的な構造を表現している文章へ統合し、これを系統化する。7.分析結果をそれぞれの協力者に戻して、体験を正確に記述しているか確かめる。以上の過程で、個々の体験の記述を研究者が解釈し、得られた意味の共通性をまとめ、自己の見通しを持つ体験の意味を見出し分析した。
【結果】
 5名(男性1名、女性4名)の研究協力者は、平均年齢50.8(SD2.05)歳であった。体験は、個別だが、共通性から5つの意味が見出さ れた。ここでは、次の3つの意味を紹介する。1.生の有限性に気づくからこそ向き合い自分自身の生を志向する。2.ありのままの自分を評価できるか らこそそのままの自分自身を志向する。3.自分だけだから自分だけではないことを志向する。
【結論】
 これらの意味からは、自己の見通しを持つ体験の意味は、自分の死の自覚を契機とし、さまざまに揺るがされた自分自身の存在を探求し、将来の確かな あり方を自覚するという生の充実への積極的努力と考えられた。

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