Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.54
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2012  54
Journal Club

‘good death’の達成のための要素として、
死亡場所の選好は相対的にどの程度重要であるか:
イギリスでの進行がん患者への調査

東北大学大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野  清水 恵

Melanie W, Holly Y,Andrew D. Opinions of patients with cancer on the relative importance of place of death in the context of a ‘good death’.BMJ Support Palliat Care 2011 1: 310-314 originally published online August 25, 2011.

【背景・目的】
 ‘good death’に関連する4つのドメインとして、“尊厳を保持できるような個別なケアを受けること”、“疼痛やその他の症状がないこと”、“慣れ親しんだ環境で過ごすこと”、“家族や友人の近くで過ごすこと”が挙げられている。イギリスでは、‘good death’の達成度について、現在は在宅死亡率が主な指標となっている。在宅死亡率が’終末期ケアの質を評価する指標として真に適切かどうかを検討するために、がん患者の終末期ケアにおいて‘good death’を達成するために、死亡場所が相対的にどの程度重要と考えられているかを明らかにする。
【方法】
 イギリスの1がんセンターの18歳以上の進行がんの外来、入院患者を対象とした質問紙調査を実施した。希望する死亡場所や容認できる死亡場所に加えて、終末期ケアに関する様々な選好(事前ケア計画や緩和ケアへのコンサルトなど)について調査し、 ‘good death’と関連することが示されている10要素(人生を全うできたと感じる、神を近くに感じ心穏やかである、自分のケアについての決定に関わる、在宅で死亡する、個人的な問題が整理できている、自分の葬儀について解決している、家族の負担とならない、社会の負担とならない、死亡まで意識がはっきりとしている、疼痛やその他の症状がコントロールできている)について、重要度の順位をたずね た。また、参加者の実際の死亡場所についての情報 を死亡後に収集した。
【結果】
 120人の患者が調査に参加した。51人(43%)の患者が自宅、39人(33%)がホスピスを希望する死亡場所と回答した。一方、容認できる死亡場所(複数回答可)として、80人(67%)が自宅、97人(81%)がホスピスを挙げていた。4ヶ月後では、71人(59%)が死亡しており、死亡場所はホスピス34人、自宅 20人、病院17人であった。その71 人のうち32人 (45%)は希望する死亡場所で死亡し、21人(30%) は容認できる死亡場所で死亡し、16人(22%)が容認できない死亡場所での死亡であった。‘good death’の達成に重要な要素の順位は、1位が“疼痛やその他の症状がコントロールできている” こと、2位が“家族の負担とならない”こと、3位 が“個人的な問題が整理できている”ことであり、“在宅で死亡する”ことは7位であった。
【結論】
 死亡場所は‘good death’の達成に重要な要素であるが、一方で、在宅死を重要と考えない人も多くいる。このことは、在宅死亡率が終末期ケアの質を評価する上で必ずしも良い指標とは言えない可能性を示唆している
【コメント】
 わが国でも‘good death’に関連する要素として、 18の要素が宮下らにより示されている。その中にも、希望する場所での死亡が重要な領域として含まれている。しかし、本研究の知見でもあるように、希望する死亡場所が必ずしも自宅であるとは限らない。わが国においても、在宅死亡率は、全国的に‘good death’の達成度の参考指標の一つではある。しかし、終末期ケアの質の多面的な評価として、‘good death’に関連する“身体的・精神的安楽”や“医療者との良好な関係”などの18の要素や、ケアの構造・プロセスについては、ホスピスや拠点病院などの一部の施設の遺族調査により、評価をしているのが現状である。わが国においても、全国的に終末期ケアの質の評価をする方法を開発していくことが今後の課題となている。

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