Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.54
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2012  54
Journal Club

コンピューターを用いた簡便なコミュニケーション・スキル・トレーニング
による腫瘍医―患者間のコミュニケーションの改善:無作為化比較試験

東北大学大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野  佐藤 一樹

Tulsky JA, Arnold RM, Alexander SC, Olsen MK, Jeffreys AS, Rodriguez KL, Skinner CS, Farrell D, Abernethy AP, Pollak KI. Enhancing communication between oncologists and patients with a computerbased training program: a randomized trial. Ann Inter Med 2011 Nov 1 ;155(9):593-601.

【目的】
 複数日数でのワークショップによる腫瘍医に対するコミュニケーション・スキル・トレーニング(CST)は効果的であったが、 参加者の負担が大きかった。本研究は、コンピューターを用いたより簡便なCSTの効果を検証した。
【方法】
 単盲検層別無作為化比較試験を行った。米国の大学病院1施設と退役軍人病院1施設の内科・婦人科・放射線科医師48名を対象に、施設・性・専門科により層別して介入群と対照群に無作為に割り付けた。各医師についてがん患者(1年以内に死亡やICU利用があっても驚かない程度の予後)の外来診療を4回以上録音した後、コミュニケーション・スキルに関する1時間の講義を行った。介入群には次の内容のCD-ROMを提供した:コミュニケーションに関する5つの要素とそれに対応するスキルの解説、介入前に録音した各医師のコミュニケーションに対する個別フィードバック。CD-ROM提供の1か月後に介入群・対照群ともにがん患者の外来診療を録音し、さらに1週間後に患者に質問紙調査を行った。評価項目は、録音したコミュニケーションでの共感的な声かけや患者の否定的な感情表出への反応の回数、患者調査での腫瘍医に対する信頼感とコミュニケーション・スキルに関する評価であった。
【結果】
 各群に24名ずつの医師が割り付けられ、264名の患者に対するコミュニケーションが録音され、216名が患者調査に回答した。介入群の医師の方が対照群の医師より有意に、録音したコミュニケーションでの共感的な声かけ(リスク比=1.9, p=0.024)や患者の否定的な感情表出への反応(オッズ比=2.1,p=0.028)の回数が多く、患者による腫瘍医に対す る信頼感(4.7 vs 4.6, p=0.036)が高かった。患者によるコミュニケーション・スキルに関する評価では有意差はみられなかった。
【結論】
 コンピューターを用いた簡便なCSTにより、腫瘍医による患者の否定的な感情表出への反応の改善が得られた。
【コメント】
 緩和ケアに関するCSTは国内外ともに重要なテーマであり、無作為化比較試験により効果も示されている(ニューズレター52号紹介論文参照)。 日本でも日本サイコオンコロジー学会によりCSTプログラムSHAREが開催されているが、 2日間のワークショップ形式である。本研究で作成した個別フィードバックを含むCD-ROMは、 作成の負担は医師1名あたり1時間程度であり、医師は自由な時間にCSTを受けられるため負担が少なく、 実施可能性のより高い方法であると言える。

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