Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.54
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2012  54
Journal Club

終末期の輸液に関する患者の決断に影響を与えるもの

聖隷三方原病院 ホスピス科  小田切 拓也

Malia C, Bennett MI.What influences Patients’ Decisions on Artifi cial hydration at the end of life? A Q-Methodology study. J Pain Symptom Manage 2011;42(2): 192-201.

【目的】
 終末期の輸液に関する意思決定を行う際に、患者が最も重要と考える因子を明らかにする。
【方法】
 英国の大規模ホスピス一施設における外来もしくは入院の進行期の患者20人が登録された。登録は異なる性別・年齢・PSの患者を選択して行われた。参加者は評価者との面接を行い、あらかじめ抽出された、終末期の輸液に対する代表的な見解や価値観である37の記述(Q-set)に対して、自身の考えに合致(同意)する程度をスコアリングする(→程度で分類する)作業(Q-sorting)を行った(Q-Methodology)。患者は、「病気が進行して水分の経口摂取ができなくなったが、点滴で水分補給ができる」という状況に自分がなったものと想像した上で、それぞれの記述にどの程度同意するのか考えるよう求められた。
【結果】
 登録された20人のうち、3人が脱落した(眠気、倦怠感、不意の面会者のため)。平均年齢は66.1歳(38〜84歳)で、うち13人が白人の英国人であった。Karnofsky Performance status (KPS) の平均は45.5(20〜60)だった。3人は終末期呼吸器疾患患者で、その他は終末期がん患者だった。全ての患者に輸液歴があったが、面接時点では輸液を行っていない状況であった。
 Q-Methodology の因子分析によって、3つの因子が同定された。
・「因子1」“どんな代償を払っても、延命を”このグループの患者は、輸液は余命を長くするものであり、延命のためのあらゆる方法を試したい、と考えていた。また、輸液に関して話し合い、なるべく医療者に決定してもらいたい、と考えていた。逆に、家族に決めてもらいたくはない、と考えていた。このグループには、非がん患者3名全員が含まれ、また全員が数年単位で疾患と付き合っている患者であった。
・「因子2」“他者に影響される受け身の決定者”このグループの患者は、輸液がQOLを改善するならば希望する、と考えていた。また、輸液の情報を得て話し合いたいが、他者(親戚、医療者、信仰)の推奨を求め、医療者(や家族)に実質的に決定して欲しい、と考えていた。このグループの患者は、自身が終末期であることを受け入れており、QOLが損なわれるのであれば延命を望まないと強く思っていた。
・「因子3」“延命よりQOLに価値を置く自主的な情報の探索者”このグループの患者は、輸液はQOLを改善する時のみ望み、状態が良い時に輸液について話し合い、効果や負担を知り、自分で決定したい、と考えていた。このグループの患者は、輸液は不快もしくは睡眠を妨げる、 と考えている傾向が見られたが、輸液は苦痛である、とまでは考えていなかった。
 一方で、輸液の決定は重要で、状態が良い時に患者と医療者が話し合うべきである、決定には医療者の勧めが必要である、輸液がQOLを下げるとは思わない、という点はすべての患者が同意していた。
【結論】
 患者は、(終末期に行う)輸液は重要な問題であり、それに関する意思決定に関わりたいと強く思っている。医療者は、終末期に行う輸液を患者に苦痛を与えるものと認識していることがあり、そのため輸液を差し控える場合があるが、その視点は患者と共有されていない。
【コメント】
 東アジアでは医療的決定に関して家族の意向の影響が強いとされている。実際、本邦で行われたJ-HOPE研究でも家族の自責感が輸液希望に影響していたことが報告されている。本研究が示したように、患者が輸液に対してどのような考えを持っているのかは重要であり、輸液に対する思いや背景(具体的に行いたいことのために輸液を希望、など)を医療者がくみ取ることも重要である。

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