Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.54
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2012  54
口演15
精神症状とセデ―ション
座長・報告  市立札幌病院 精神科  上村 恵一
 本セッションでは精神科受診のバリア、精神症状のスクリーニング、怒りについて、鎮静におけるミダゾラムについての検討という多彩な内容の発表が行われた。
 大阪大学コミュニケーションデザインセンター心理士・平井啓先生は、血液がん患者139名を対象に行ったアンケート結果から3割近い患者が精神科受診に対してイメージが悪いことを指摘し、その要因には向精神薬に対しての拒否感などが背景にあること、またピアサポーターの存在、心療内科医、心理士の存在などがバリアの低下に寄与していることを明確に話してくださった。
 原三信病院血液内科・上村智彦先生は、同種造血幹細胞移植患者の抑うつ症状のスクリーニングにHADS (Hospital Anxiety and Depression Scale) を使用し専門看護師の介入、不安が強い場合には薬物療法の導入という介入をされた14名の転帰を解析された。入院期間の延長などで抑うつ症状が遷延すること、このツールが移植患者の抑うつスクリーニングとプライマリーチームの介入に有意義であることを指摘していただいた。
 丸山記念総合病院外科・高橋孝郎先生は、乳がんに対して外来化学療法施行中の45名の患者の抑うつ症状のスクリーニングに、つらさと支障の寒暖計を使用し、つらさ5点かつ支障5点というカットオフを用いて良好な介入結果を得ており、外来化学療法中であっても簡易な方法でスクリーニングを行える手段を提示していただいた。
 名古屋市立大学病院 緩和ケア部/ 名古屋市立大学大学院医学研究科 精神認知行動医学・佐川竜一先生は、名古屋市立大学病院緩和ケアチームで施行した看護記録チャートレビュー281例から怒り表出とその関連因子を分析し、患者の怒りへの対処には精神医学的評価がきわめて重要で、意識障害であるせん妄を何よりも先に鑑別することが大切であるというきわめて貴重な示唆をいただいた。
 横浜市立みなと赤十字病院緩和ケア科・藤井由貴先生は一般病棟と緩和ケア病棟におけるミダゾラム使用実績について発表下さり、緩和ケアチーム介入で一般病棟でも患者の意思決定支援ができることを、岐阜県立多治見病院呼吸器科・志津匡人先生は非悪性疾患の鎮静の状況に関して発表いただき、鎮静理由、意思確認などにおいて悪性疾患との差異は少ないことを紹介していただいた。
 精神科を専門としないスタッフが利用できる有効な精神症状スクリーニングが現場で実践されていることの示唆をいただいた意義あるセッションだった。この場をお借りして活発なディスカッションをいただいた参加者の皆様にも感謝申し上げたい。

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