Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.54
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2012  54
口演8
栄養・輸液(1)
座長・報告  相模原中央病院 外科  戸倉 夏木
 緩和ケアにおける栄養・輸液に対する関心は以前より高く、今までの学会セッションでも人気のあるものでしたが、予想通り会場は立ち見の聴衆であふれかえるものでした。
 演題1.札幌南青洲病院の中島氏は第14回から継続して臨床研究に取り組まれた、終末期がん患者の溢水症状に対する輸液治療の介入効果を発表されました。入院時に溢水症状を呈した患者に輸液治療のガイドラインに基づいた治療を行うことで多くの症状が改善されることを発表され、ガイドラインの重要性を再認識しました。
 演題2.東京慈恵会医科大学柏病院の濱口氏は、担がん患者における腎機能の評価、特にgGFRとCa値の検査が重要であると発表されました。がん終末期に用いる薬剤には、腎機能障害時の使用に慎重にならざるを得ない場合もあり、正常Cr値を示す患者の中にもeGFRの低い患者がいることを忘れてはならないことを示されました。
 演題3・4.がん終末期患者は輸液ルートの確保、特に末消血管の確保が難しくなることが多く、県立広島病院の山内氏、小樽協会病院の田本氏が多数のPICC(末梢挿入型中心静脈カテーテル)症例を報告されました。アメリカでは一般的なPICC も日本ではまだ浸透しておらず、緩和ケア領域で広まる可能性を示唆してくれました。特に両氏ともPICC の症例数が増加するとともに手技の安定化、合併症の減少につながることを報告されました。またPICCを挿入したまま外来治療への移行症例も提示され、今後の緩和ケアにおける輸液治療の方向性を示されたことは興味深いものでした。
 演題5.市立宇和島病院の松本氏は頭頚部がん患者の治療前胃瘻造設が入院期間の短縮につながるという結果を発表されました。頭頸部がん患者は放射線化学療法により口内炎、咽頭痛を生じることが多く治療前の胃瘻造設による栄養管理が重要であり、栄養指標に有意差はないものの、大幅な入院期間の短縮につながったことは頭頸部がん治療の指針になるものと思われました。
 緩和ケアにおける栄養・輸液に関しては今回の発表のように、まだまだ新しい知見を得ることができ、今後も発展的な発表が期待できるセッションでした。

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