Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.54
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2012  54
モーニングセミナー5
肺癌治療は最初から緩和治療である
〜臨床腫瘍医から緩和治療専門医の先生方へのメッセージ〜
座長・報告  KKR 札幌医療センター 腫瘍センター  磯部 宏
 演者は内科医として長く肺癌診療に携わってきた北海道大学第一内科講師の大泉聡史先生で、昨年発表された二つの肺癌診療に関わる重要な報告を中心にお話を進められました。
 一つは演者や私も関与しているのですが、肺癌治療における分子標的薬剤ゲフィチニブの臨床的意義に関する報告(N Engl J Med 2010;362:2380-8.)です。腫瘍細胞自体にEGFR遺伝子変異があるとゲフィチニブが大変良く奏効することが知られております。このEGFR遺伝子変異陽性の患者さんに初回治療としてゲフィチニブを投与した場合と通常の殺細胞性抗癌剤を投与した場合、全生存期間は全く変わらないのですが、無増悪生存期間やQOLは遙かにゲフィチニブ投与群が優っていたとする報告です。患者さんのQOLを重視した治療が可能になってきたということを意味しています。
 もう一つは非小細胞肺癌に対して早期から専門チームによる緩和ケアの介入の意義をランダム化比較試験で示した米国からの報告(N Engl J Med 2010;363:733-742)です。早期緩和ケア群がQOLの改善や抑うつ状態の減少、さらに予後延長にも繋がったとする報告です。演者より細かい分析内容も紹介されましたが、専門チームの早期介入が肺癌という疾患の理解と治療目標の再確認に繋がり、より有益な時間の活用ができたのではないかと拝聴しました。最後に北海道のがん診療連携拠点病院や緩和ケア病棟、終末期在宅医療の実態を紹介・分析していただきました。
 会場と一体となった討論ではゲフィチニブを最初に使うべきなのか、日本でも緩和ケアチームの早期介入が有益なのか、そもそも治療専門医と緩和ケアチームの関わりはうまくいっているのか、どうすればうまくいくのか…、といった、本学会に相応しい、しかし直ぐには結論の出ない重要な話題で盛り上がった、とても印象深いセミナーでした。

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