Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.54
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2012  54
イブニングセミナー9
がんに対する活性化自己リンパ球移入療法の役割〜がんは克服できるか〜
座長・報告  国際医療福祉大学三田病院 外科・消化器センター  太田 惠一郎
 2011年7月29〜30日に札幌で開催された第16回日本緩和医療学会学術大会(大会長 = 十和田市立中央病院・蘆野吉和院長)では、「いのちをささえいのちをつなぐ 緩和ケア〜病院から地域へ〜」をテーマに、特別講演やシンポジウムが行われた。ここではイブニングセミナーから、山口佳之氏(川崎医科大学臨床腫瘍学教授)による「がんに対する活性化自己リンパ球移入療法の役割〜がんは克服できるか〜」の講演概要を紹介する。
 免疫は、生来からある自然免疫と、後天的に獲得する獲得免疫に大別される。消火活動に例えると、外部からの異物やがんなどに対し、哨戒中の消防団(好中球やマクロファージなど)が対応する初期消火(一次対応)が前者であり、司令部(DC)への連絡を受けて駆けつけた消防車(Bリンパ球、Tリンパ球など)による対応(二次対応)が後者に相当する。好中球やリンパ球などは免疫担当細胞と総称され、その増殖や分化、抑制にはサイトカインなどの免疫物質が関与していることが明らかとなっている。
 こうした免疫の仕組みを利用して行う治療が免疫療法で、近代の免疫療法の歴史は、1970年代以降、大きく3つの世代に分類できる。第一世代はキノコ類由来の蛋白多糖体やある種の細菌製剤であり、第二世代はIFNやILなどのサイトカインと、抗CD20抗体リツキシマブや抗HER2抗体トラスツズマブなどのヒト化抗体製剤である。そして第三世代となるのが、腫瘍抗原を用いたがんペプチドワクチン療法や、自身のリンパ球を用いる活性化自己リンパ球移入療法などである。活性化自己リンパ球移入療法は、当初、末梢血から分離したリンパ球をそのまま用いていたが(Lymphokine-activated Killer;LAK療法)、腫瘍特異性が高くなかったことから、腫瘍組織に浸潤しているリンパ球(TIL)を用いる手法や腫瘍細胞で刺激したリンパ球(CTL)を用いる手法が開発されてきた。
 山口氏らは2009年6月から川崎医科大学で活性化自己リンパ球移入療法を開始し、同年10月には先進医療として認可されている。昨年までに113例が登録され、観察研究として評価できた41例中CR2例(乳がん脳転移、膵がん肝転移各1例)を含む奏効例6例(15%)と腫瘍が縮小した症例は少ないものの、腫瘍が増大せずにSDとなる症例が27例(66%)、体調の回復などQOLが改善した方は21例(51%)に確認された。山口氏は「SDの割合が多いという点は、2010年に世界で初めて米国FDAが認可した治療用のがんワクチンsipuleucel-Tの大規模臨床試験で、腫瘍縮小効果があまり大きくはなかったにもかかわらず、生存期間が延長する結果が得られたことに通じるものがある。腫瘍縮小と予後延長は別の概念として分けて考えるべき時代が来ているのではないか」と指摘した。
 また、がん医療における免疫療法や緩和医療の位置づけ、相似性について触れ、「がんは、完治が困難な疾患である。しかし、最後まで自分らしくあり続けることで、がんは克服することができる。そうした患者さんの思いに、希望に、寄り添う医療が免疫療法であり緩和医療ではないか」との見解を示した。そして、自施設での症例経験を踏まえながら「免疫療法は、がん医療の中で自分を見失った患者が自分を取り戻すための希望の藁として、緩和医療と同様に患者に寄り添う医療であると考えている」と講演を結んだ。

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