Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.54
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2012  54
イブニングセミナー7
明日から、あなたも使えるPCA
座長・報告  慶應義塾大学医学部 麻酔学教室 腫瘍センター緩和医療部門  橋口 さおり
 医療用麻薬の感受性には約10倍の個人差があるとされており、医療用麻薬を難しいものにしている。この個人差を考慮しつつ、効果的で安全な医療用麻薬の投与法を考えなければならない。そこで近年普及しつつあるのが、PCA (Patient Controlled Analgesia:患者自己調節鎮痛法)である。高橋先生は、PCAをこれから導入する施設の医療者にもわかりやすいように、しくみと薬理学的根拠について解説された。PCAはMEAC(Minimum eff ective analgesic concentration:患者が「痛くない」と感じる最小の鎮痛薬効果部位濃度)は個人差が大きいが、MEACとMCP(Maximum concentration with pain:患者 が「痛い」と感じる最大の鎮痛薬効果部位濃度)の差には個人差が少ないことを根拠にしたしくみである。医療用麻薬未使用患者に鎮痛効果をより早く感じてもらうためには、医療者の手でMCP付近まで効果部位濃度を引き上げることが望ましい。そうすることで患者は自らボーラス投与を行うことで疼痛緩和が得られることが実感でき、PCA操作法がわかるようになり、スムーズな導入が可能となる。また、Tivatrainer Rという、麻酔領域で用いられる鎮痛薬の効果部位濃度のシミュレーション画面を提示し、モルヒネもフェンタニルもボーラス投与量(追加投与量)としては1時間量が適当であることを示した。ただし、モルヒネを追加投与した際の効果部位濃度の変化はゆっくりであるのに対し、フェンタニルは追加投与5分後に約60%上昇するものの代謝・再分配が早く、すぐに効果部位濃度が降下するため、追加投与回数を参考にした持続投与量の決定は薬物ごとに異なることを示し、フェンタニルの投与量調整には注意が必要であることにも言及した。PCA用デバイスに改良が重ねられ、国内の事情に合わせた製品が開発されている。今後はPCAがさらに普及し、在宅を含めた様々な場面で、より効果的な鎮痛が可能になるであろうことを期待しつつ、セミナーを終了した。

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