Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.54
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2012  54
シンポジウム2
神経障害性疼痛のメカニズムからマネジメントまで
座長・報告  長崎市立市民病院 麻酔科・緩和ケアチーム  冨安 志郎
 神経障害性疼痛は、複数の発生メカニズムが存在することや、同じ疾患で発生した神経障害性疼痛なのに違ったメカニズムの関与が示唆される場合があるなど、個々に対応が必要な痛みである。したがって臨床症状からメカニズムを想定し、そのメカニズムに作用する薬剤で、患者に耐用性のあるものを選ぶのが、現在もっとも有効確率の高い方法と考えられる。このことを明らかにするために4名の先生に御登壇いただいた。九州大学大学院薬学研究院薬理学分野の津田誠先生は、神経障害性疼痛発生の源にミクログリアの活性化があり、これがATP受容体の発現誘導、維持に関与し、結果として痛みを増強する炎症性因子や神経栄養因子が増え、脊髄後角ニューロンの変調をきたすことが痛みの維持につながるので、ATP受容体拮抗薬などミクログリア活性を抑制する薬剤が今後の創薬の有望なターゲットになる、という基礎実験結果を示された。東京大学医学部附属病院麻酔科・痛みセンターの住谷昌彦先生は、非がんを含む神経障害性疼痛のスクリーニング、診断方法を示された。painDETECTなどの点数化できるスクリーニング方法を用いて神経障害性疼痛の診断を確実に行ったうえで、昨年作成された日本ペインクリニック学会のガイドラインに従って薬剤を選択することを示された。オピオイドに関しては長期投与のデータが確立されていないことなどを踏まえ、モルヒネ換算で120mg/dayを超えないことが望ましい、との基準を示された。KKR札幌医療センターの瀧川千鶴子先生は、国際疼痛学会の神経障害性疼痛治療薬の推奨をベースに緩和ケア対象患者における薬物療法のコツを症例を通して示された。具体的には1.予後の把握が重要であること、2.単剤にこだわらないこと、3.副作用を的確に把握するためにコミュニケーションが重要であること、4.原因へのアプローチが可能かどうか、常に考えることが重要である、とのことであった。埼玉医科大学総合医療センターの佐野元彦先生は、抗がん剤療法に携わる薬剤師の立場から、抗がん剤誘発末梢神経障害性疼痛(CIPN)へのアプローチについてお話しいただいた。CIPN はFACT/GOGなどの評価表を用いて経時的評価を行い、発生リスクの高いレジメンにおいては有効と考えられる予防薬の投与を行こと、神経障害発生が疑われる場合は投与タイミングを変更するなどの工夫が必要であること、日常生活に影響を及ぼすCIPN に対してはリハビなども含め多面的にアプローチすることの重要性を強調された。
 基礎実験に基づく臨床での工夫が網羅され、明日からの治療に直結する、内容の充実したシンポジウムであった。

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