Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.54
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2012  54
招待講演1
Palliative Care in the United States :
Trends in Ethics , Public Policy & Practice
座長・報告  北海道医療大学大学院  石垣 靖子
 Dr. ScanlonはCalvary Hospitalで臨床心理士として、その後アメリカ看護協会Center for Ethics and Human RightsのDirectorとして仕事をしたのち、現在のCatholic Health InitiativesのSeniorVice President , Advocacyになってからは、全米はもとより世界各地での活動を含め、一貫して弱い立場にある人の人権擁護に携わってきた。これまでの数回の来日も常に緩和ケアにおける倫理と人権に関して、静かな、しかし情熱を込めた講演で多くの医療専門職に感動を与えてきた。
 今回の講演はアメリカにおける緩和ケアの動向を、倫理(Ethics)、公共政策(Public Policy)そして実践(Practice)に焦点をあてて話されたが、現在の日本の緩和ケアの動向と重なることも多かった。アメリカの緩和ケアはいま、医学や看護における一つの専門分野として認識されようになってきたこと、緩和ケア分野の専門的訓練・教育・認定制度が強化されてきたこと、エビデンスに基づいた緩和ケアの研究や質の高い標準的医療が増えてきたこと、そして、臨床における緩和ケアの実践が劇的に増えてきたことなどについて概説された。
 アメリカも日本と同様に人口の高齢化は著しく、2030年には65歳以上の人口が全人口の20%に到達することが予想されており、それに伴って緩和ケアにおける倫理的な課題も顕在化してきた。本人の望まない治療を拒否する権利や事前指示に関すること、医師の自殺ほう助や安楽死など“死ぬ権利”に関することなどである。緩和ケアにおける複雑な倫理的課題に対応するには、医療チームとして患者の意思決定を支援する仕組みが必要である。例えば、直面している倫理的課題を明らかにし、それに対応するすべてのオプションをあげ、その一つひとつについて評価し、その人にとって今何をすることが最も適切であるのかを医療者と患者・家族が合意する。そして実践したことの振り返りと評価をし続けることである。
 公共政策については、アメリカは州によって異なるが、主に取り扱う領域は事前指示、疼痛や症状のマネジメント、DNRO(Do Not ResuscitationOrder)、医師による自殺ほう助、医療費支払いに関することなどである。公共政策の決定に関して臨床家の役割は大きく、専門職の責務として緩和ケアの質を高めるためのポリシーやガイドラインの作成に関与していくことが求められる。
 Dr. Scanlonは最後にDr. Foleyの言葉で講演を結んだ。「緩和ケアは、国際的に共通する人権である。卓越したend-of-lifeケアは、良質で思いやりのある医療以上に価値があるものであり、それは国際法と同じくどこにおいても尊重されるべき基本でもある。」
 (なおDr. Scanlonの講演は千葉大学大学院の手島恵教授の通訳によってより分かりやすく伝えられた。)

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