Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.53
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2011  53
Journal Club

がん対策基本法に基づく緩和ケア研修会の企画・運営および学習資料の問題点

旭川医科大学病院 緩和ケア診療部  阿部 泰之

Abe Y. Yamamoto R, Kizawa Y. Current problems with project management and learning materials of a palliative care education program for physicians based on the Cancer Control Act. Palliative Care Research 2011; 6(2): 143-9

【目的】
 わが国において医師など医療者に対する緩和ケアの基本教育の不足が指摘されている。このような背景から、がん対策推進基本計画においてすべてのがん診療に携わる医師が緩和ケアの基本知識を習得することを目的として緩和ケア研修会が計画され、厚生労働省の委託を受けた日本緩和医療学会がPEACEプロジェクトとしてこの研修会事業をサポートしている。事業開始から2年(研究開始時点)が経過し修了者は確実に増加しているが、一方で研修会の企画運営および学習資料の問題点も指摘する声が上がっている。本研究の目的はこれら問題点を明らかにすることである。
【方法】
 緩和ケア研修会の問題点を明らかにするために「研修会改善のためのワークショップ」を開催し、参加者(指導者研修会修了者)により問題点のブレインストーミングが行われた。本研究はこのブレインストーミングで出された意見をコード化し、3名の研究者によって再構成し質的に分析したものである。
【結果】
 178個のコードが抽出され、企画の問題点として4つのカテゴリー、運営の問題点として6つのカテゴリー、内容・マテリアルの問題点として6つのカテゴリーに分類された。企画の問題点として企画責任者は都道府県、医師会、拠点病院間、院内それぞれとの連携の困難感を抱いていた。運営上も開催者は様々な問題を抱えていた。運営をすることの金銭的・人的負担、参加者やスタッフの経験やモチベーションの差、ファシリテーターの能力差などがカテゴリー化された。内容・マテリアルの問題点としてスライド内容や、使用法・教育法についての問題が明らかとなった。
【結論】
 緩和ケア研修会における企画・運営、学習資料の問題点が明らかとなった。PEACEプロジェクトによるサポートが行われているが、開催者の物理的心理的負担はいまだ大きかった。問題点や学習者のニードは様々であり、一様の開催指針や学習資料でカバーすることが困難であると考えられた。この問題点の解決法として次の6つが考察された。1.学習者のニードやレベルに応じた研修内容の選択、2.e-learningによる事前学習の導入、3.指導者のさらなる育成、4.ファシリテーターの質の維持、5.モジュールの追加を含む学習資料の改善、6.上記を組み込んだ開催指針の改訂
【コメント】
 がん対策基本法に基づいた緩和ケア研修会が全国で広く行われ、緩和ケア自体が広がるきっかけとなっている。しかし、緩和ケア研修会の実効性の確認や問題点の抽出はこれまであまり行われてこなかった。本研究は対象者の選択などの面で限界を持つものの、全国の緩和ケア研修会自体の問題点を初めて明らかにしたものである。今後もよりよい教育が行われるように緩和ケア研修会の評価を続ける必要がある。

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