Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.53
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2011  53
Journal Club

ギリシャの乳がん患者の、意思決定時に担う役割の
選好と情報ニードについての調査

東北大学大学院医学系研究科保健学専攻 緩和ケア看護学分野  清水 恵

Almyroudi A, Degner LF, Paika V, Pavlidis N, Hyphantis T.Decision-making preferences and information needs among Greek breast cancer patients.Psychooncology. 2011 Aug;20(8):871-9.

【背景】
 ギリシャでは、医療において、パターナリズム的な医師−患者関係の文化が強く根付いているが、近年では、医師と患者が共同して意思決定を行うことが推奨されてきている。しかし、実際に患者が意思決定時にどのような役割を担うことを望んでいるかは明らかにはなっていない。そこで、本研究では、ギリシャの乳がん患者が、治療の意思決定にどのように参加することを望んでいるか、またどのような情報ニードがあるかを調査する。
【方法】
 2008年2月から2009年9月ギリシャの1大学病院の腫瘍外来を受診した乳がん患者329名を対象とし、治療の意思決定場面に患者自身がどのように参加したいと考えているかについて、TheControl Preference Scaleを用いアセスメントを実施した。情報ニードについては、The Cassileth’sInformation Styles Questionnaireを用い、情報の量や内容についてのニードを調査した。
【結果】
 患者の平均年齢は59歳、約半数が診断時にステージU、70%が乳房切除術を受けていた。患者のうち234人(71.1%)が意思決定時に受動的な役割でありたいと考えており、その中でも、149人(45.3%)意思決定の責任を完全に医師に担ってもらいたいと考えていた。一方で、医師と共同して意思決定を行いたい患者は24%、わずかに1人だけが積極的に自分自身で意思決定を行うことを選好した。情報ニードについては、62.6%の患者が、good newsでもbad newsでもできる限り多くの情報がほしいと回答したが、37.4%は詳細な情報はいらない/good newsのみ知りたいと回答した。より低い情報ニーズ、意思決定への消極的な参加を望んでいることと、がん診断以前にマンモグラフィー検査やPAPテストを受けた回数が少ないことが有意に関連していた。
【考察】
 他国での調査結果と比較して、本研究の結果では、意思決定時に受動的に参加したいと考えている患者の割合が最も高かった。特に、アメリカやカナダでは意思決定により積極的に参加したいと考えている患者が多いことと比較すると、ギリシャの医療におけるパターナリズム的な医師−患者の関係が際立つ結果となった。情報ニーズの低さや意思決定への消極的な参加の選好とスクリーニング検査の実施の少なさとの関連は、患者にとって適切な情報や選択肢を提供する重要さを示している。
【コメント】
 意思決定における患者の役割の選好については非常に文化差が大きいと考えられる。日本においても、特に高齢者において医師に“おまかせ”したいと考える割合が高いことが調査で明らかになっている。しかし、医師に“おまかせ”したい=情報ニードがないではなく、個人によって必要としている情報はさまざまである。患者各個人に適した情報の提供(内容や量)を実施し、その上で各個人の望む意思決定への参加を助けることはわが国でもなお重要な課題と言える。

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