Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.53
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2011  53
Journal Club

緩和ケアに関するコミュニケーション・スキル・トレーニングの
無作為化比較試験による効果検証

東北大学大学院医学系研究科保健学専攻 緩和ケア看護学分野  佐藤 一樹

Goelz T,Wuensch A,Stubenrauch S,Ihorst G,de Figueiredo M,Bertz H,Wirsching M,Fritzsche K. Specific training program improves oncologists'palliative care communication skills in a randomized controlled trial. J Clin Oncol. 2011 Sep 1; 29(25):3402-7.

【目的】
 腫瘍医にとって緩和ケアに関する患者との相談はがんの積極的治療に関する相談と比較して困難である。緩和ケアへの移行に焦点をあてた簡便で個別的なコミュニケーション・スキル・トレーニング(CST) であるCOM-ON-pの効果を検証した。
【方法】
 ドイツの大学病院1施設の腫瘍医41名を対象に無作為化比較試験を行った。最初に全対象者は患者と役者を相手に2シナリオについて相談を行いビデオ録画した。1つ目のシナリオは、予後が数週間以内と予測される状況での患者と家族( 主に家族) 対象の緩和ケアの相談であった。2つ目のシナリオは、予後が数カ月以上見込まれる状況での患者と家族(主に患者) 対象の緩和ケアの相談であった。介入群の医師は1週間後にCOM-ON-pのワークショップ参加し、その2週間後に個人的なフォローアップを受けた。全対象者は5週間後に最初と同様のビデオ録画を行った。
 COM-ON-pは、11時間(1.5日) のワークショップ、2週間後の個別フォローアップ(0.5時間)、前後の模擬患者でのアセスメント(各1時間) から成るCSTであり、欧州の専門家の推奨に基づいて開発された。ワークショップは、ファシリテーター、医師4名、患者と家族役の役者の少人数で、参加者の提供した症例について実践を行った。
 評価者はビデオ録画から医師の相談時の態度をチェックリストを用いて評価した。チェックリストは、緩和ケアへの移行6項目、一般的なコミュニケーション・スキル9項目、家族を対象に含むこと4項目であった。また、コミュニケーション・スキルと家族を対象に含むことの全般的評価をそれぞれ1項目ずつ尋ねた。分析は、ベースラインを共変量とした混合効果モデルにより行った。
【結果】
 介入群に22名、対照群に19名が割り付けられ、全対象者が調査を完遂した。対照群と比較して介入群では、チェックリストの3領域の全て有意に改善した(全てp<.01)。全般的なコミュニケーション・スキルと家族を対象に含むことの評価は、介入群の方が有意に評価が高く(全てp<.01)その差の大きさは中程度であった。
【結論】
 簡便なCSTにより医師の緩和ケアへの移行に関するコミュニケーションの実践を向上させることができた。一般化や臨床での適用についてはさらなる研究が必要である。
【コメント】
 緩和ケアに関するCSTは国内外ともに開発が進む重要なテーマであり、本研究は無作為化比較試験により効果を検証した初めての調査であり意義深い。わが国では患者に悪い知らせを伝えることに関するCSTプログラムSHAREが日本サイコオンコロジーにより実施されている。

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