Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.53
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2011  53
Journal Club

真実を告げることに関する在宅緩和ケア患者の経験

聖隷三方原病院 ホスピス科  小田切 拓也

FriedrichsenM,LindholmA,MilbergA.Experience of truth disclosure in terminally ill cancer patients in palliative home care.Palliat Support Care. 2011; 9:173-180.

【目的】
 「予後が限られる」ことを伝えるtruth tellingに関して、終末期がん患者の経験や選好を明らかにすること。
【方法】
 研究は、スウェーデンの2つの在宅緩和ケアユニットにおいて行われた。対象患者は、18歳以上、病名・予後を知らされている、身体・精神両面で満足な状態と自身が考えている、患者とした。まず、抗がん治療の終了を告げることに焦点を当てた31件の面接を行った。加えて、真実の情報についての患者の経験や選好に特に注目した14件の面接を行った。参加患者の年齢は29〜84歳で、平均66歳だった。初めの31件の面接では、患者の「悪い知らせを告げられた経験」のみに焦点を当てたにもかかわらず、真実を告げることの要否に関して患者から語られた。次の14件の面接では、同様に、「悪い知らせを告げられた経験」を語ってもらったが、真実を告げることの重要性や「真実」の構成要素を掘り下げて語られた。データの分析は解釈学を用いて行われた。
【結果】
 すべての患者が「真実」を知りたいと思っていたが、患者にとっての「真実」には次の3つの種類が存在していた:(1) 完全な真実:今自分が死に向かっており、残された時間が限られていること、病気の進行を止める手段がこれ以上ないこと、など。将来何が起こるかの予想、予想される症状と対処法を含む。(2) 部分的な真実:部分的であったり、ある種の事実を含むが、すべての情報は含まないも。予後や耐えがたい症状が生じうるなど、つらい事実に関する詳細は含まない。(3) 望ましい真実:健康についての肯定的なメッセージや腫瘍が奇跡的に消えたなど、患者が希望している真実。
また、異なる真実のタイプと、異なるコーピング形態が関連していた:(1) アクションを起こすために真実に直面する:真実を知ることによってコントロール感が得られ、安心し冷静で居られ、残りの時間を計画することができる、(2) 希望を維持する為に部分的な真実に直面する:肯定的な心境で生きることを望み、医師は患者の利益になる情報を提供するべきで、恐ろしい詳細を提供するべきではない、と感じる、(3) 真実への直面と逃避の間を漂う:将来に関する不快な情報を聴きたくない一方、他の気付くべき真実があるはずだと知っている。知りたい気持ちと知りたくない気持ちを漂う。
実存的に生きようと格闘する中で、患者は異なる真実を望み、コーピングの形態を選び、また、状況に応じてコーピングの形態を変えていた。
【結論】
 「真実を伝える」という行為は、単純な情報を与えるという行為以上のものである。個々の希望に合わせた“真実”に細かにチューニングすることで、患者の実存的生存を支持する方法になる。
【コメント】
 患者の思いも変化する為、どのような情報を伝えるべきか、何を指標にするかが難しいため、患者自身に、病気に関してどれぐらい、どのような情報を知りたいかを聞くことは有用である(たとえば、入院時に予後告知希望を聞く、など)。また、おかれた状況により、患者が選好する真実やコーピングが変わりうるので、その都度、どの真実について話したがっているか、どのようなコーピングをしているか評価することは、その助けになり、医療チーム内でメリット・デメリットを考えながら対応を判断するのがよいと考えられる(ex. 情報を伝えることで、行動が変わる余地があるか)。

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