Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.53
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2011  53
Journal Club

せん妄治療におけるアリピプラゾールとハロペリドール

聖隷三方原病院 ホスピス科  小田切 拓也

Boettger S, Friedlander M, Breitbart W, Passik S.Aripiprazole and haloperidol in the treatment of delirium.Aust N Z J Psychiatry. 2011 Jun; 45(6):477-82.

【目的】
 せん妄の症状改善や、活動型サブタイプの違いによる、アリピプラゾールとハロペリドールの効果と認容性を比較する。
【方法】
 2004年7月から2006年6月までの、Memorial Sloan Kettering Cancer Center のPsychiatry Service に、せん妄対策目的で紹介され、DSM WTRのせん妄の基準を満たす患者を対象とした。前向きにデータを集積し最初のせん妄診断時(T1)、48〜72時間後(T2)、7日目(T3)のMemorialDelirium Assessment Scale (MDAS)、KarnofskyPerformonce Scale (KPS)、簡潔型the Udvalg forKliniske Undersogelser Side Effect Rating Scale(UKU) を評価した。次にアリピプラゾール治療患者(ARI)と、case-matchなハロペリドール治療患者(HAL)を抽出した。基本的にどちらの薬剤を使用するかは担当の精神科医の判断にゆだねられたが、重度の症状や焦燥感がある場合は、HAL が使用された。
【結果】
 21人のARI群と背景情報を一致させた21人のHAL群が抽出され解析された。診断時MDASは両群で統計学的有意差はなかった。T1からT3の経過で、MDASはARI 群で18.1から8.3へ、HAL群で19.9から6.8に改善した(両群間で有意差なし)。せん妄改善率は、ARI群で76.2%、HAL群で76.2% だった。低活動性せん妄において、MDASはARI群で15.6から5.7へ、HAL群で18.8から8.1に改善した。低活動性せん妄の改善率は、ARI 群で100%、HAL群で77.8%だった。過活動性せん妄患者では、MDAS スコアはARI群で19.9から6.8、HAL群で20.8から5.8に改善した。過活動性せん妄の改善率は、ARI群で58.3%、HAL群で75%だった。ARI群とHAL群で、治療結果に有意な差はなかった。錘体外路症状は、ARI群 0%、HAL群19%。HAL使用量が多いほど錐体外路症状の頻度が高かった。
【結論】
 アリピプラゾールはせん妄治療において、ハロペリドールと効果は同等であるが、ハロペリドールの方が錐体外路症状の合併が多い。
【コメント】
 この研究ではPS3〜4程度の入院患者が対象となっており、両薬剤とも使用量は、日本における日常臨床と比較するとかなり多い印象であるため、今回の結果を直接的に日々の臨床には当てはめられない可能性がある。しかしながら、従来言われていたように、アリピプラゾールは、錐体外路症状は少なく、過活動性せん妄や強い症状への効果は弱いが、低活動性せん妄に対する効果が大きいことが示唆された。今後は盲検化された前向き比較試験での検討が必要である。

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