Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.53
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2011  53
イブニングセミナー10
要介護高齢者の口腔に関する諸問題
〜口腔ケアと摂食・嚥下障害〜
座長・報告  花形歯科医院  花形 哲夫
 大会テーマ「いのちをささえ いのちをつなぐ緩和ケア〜病院から地域へ〜」のもと、藤本篤士先生より平均年齢約82歳、866床を有する札幌西円山病院における入院患者の口腔の諸問題についてその具体的対応と考え方について、緩和医療にかかわる多職種の方々を対象に講演をいただきました。入院患者の栄養方法はTPN・PPNによるものが15%、経管栄養が約40%で、また中等度から重度の認知症の患者が約70%療養しています。この中で入院患者を主に歯科診療を行っていると口腔の様々な問題に遭遇します。神経難病、長期臥床、認知症などの事例において咬む力がコントロールできないことによる咬傷や歯の破折・脱落や誤嚥の問題を起こします。また舌機能低下により歯が移動して咬合が崩壊し嚥下障害が重篤化、義歯が使用できない、また不随意運動を起こすことなどもあります。
 病態を考慮しての歯科治療、特に口腔機能を考慮しての義歯・舌接触補助床・軟口蓋拳上床などの装着により摂食・嚥下障害の大きな改善が見られます。さらに口腔ケアにおいて、口腔内の状態に合わせた適切な用具や保湿剤などを使用することにより、口腔環境ばかりでなく口腔機能の向上を見るような症例も多いです。特に口腔内乾燥症は摂食・嚥下障害、コミュニケーション、自浄作用などの低下を起こします。保湿にワセリンなども使われますが、口腔細菌の80%を占める嫌気性菌の増殖リスクとなります。口腔の状態に合わせて、それぞれの物性の違う保湿剤の中から適切なものを選択することが重要です。また、粘膜ブラシによる粘膜ケアは小唾液腺の刺激には有効で口腔内乾燥の改善につながります。
 このセミナーは、高齢者社会において多職種の連携のもと器質的・機能的口腔ケア、また歯科治療を行うことにより、緩和医療において生涯口から安全に美味しく食べる喜びを知っていただき、「生活を支える医療」の一助になると確信いたしました。

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