Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.53
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2011  53
ワークショップ1
緩和的放射線治療の実際(適応と評価)
座長・報告  君津中央病院 放射線治療科  清水わか子
 今回、緩和的放射線治療のセッションを行うにあたっては、代表的な「有痛性骨転移」と「脳転移」を基本的に除外しました。その上で、「放射線治療でどのような症状緩和が出来るか」あるいは「現状としてどのような問題点があるか」について発表者と会場の参加者が共に考え方の相違を認識したり知識を共有できたりするような方向性を心がけました。
 応募された演題数は予想以上に多かったのですが、この中で6名の方に登壇していただきました。学会初日の朝1番のワークショップで、初めは会場の参加者数もまばらでハラハラしましたが、最終的には数十名の放射線腫瘍医を含む300名を超える程度の参加者があり、活発なディスカッションが行われました
 市立堺病院・池田恢先生からは現状のストロンチウム(メタストロン注R)の適応の問題点を指摘した話題が提供されました。会場からも「添付文書の『使用上の注意』の記載(骨転移の疼痛に対する他の治療法(手術、化学療法、内分泌療法、鎮痛剤、外部放射線照射等)で疼痛コントロールが不十分な患者のみに使用すること)の変更が必要」という意見があり、同じような問題意識を緩和医療と放射線治療の双方から共有できました。この問題にはストロンチウムの認可に至るまでの歴史的な背景もありますが、何らかの改善の方向が示されたと考えられ、今後の展開が期待されます。
 金沢大学・熊野智康先生、愛知県がんセンター・近藤千紘先生、指定発言のKKR札幌病院・永倉久泰先生の3名からは、臓器や対象疾患などは異なりますが、基本的に「放射線による腫瘍の制御が症状緩和につながる」という内容でした。勿論、予後や治療による有害事象、治療の奏効期間など、考えるべき要素は多岐にわたります。適切な治療のタイミングや放射線治療にかける期間については様々な視点からの検討が必要と思われますが、ともすれば緩和医療の側だけでなく放射線治療を行う側も「症状緩和が目的」と考え、「腫瘍の局所制御」という本来の放射線治療の役割の重要性を軽視しがちな緩和的放射線治療の領域においても、抗腫瘍治療としての放射線治療の役割を認識することが出来たのではないかと思います。
 市立長浜病院・伏木雅人先生からは「再照射」という問題が提起されました。担がん生存期間が延長した結果として、「症状の再燃」が問題となることも従来に比べてはるかに多くなっています。放射線治療の技術的な進歩はある程度「再治療」という選択肢も可能にしましたが、再治療に伴うリスクは依然として小さくないことを改めて示す内容でした。リスクとベネフィットについて十分に検討したうえでベストを尽くすことが求められます。
 埼玉医科大学・高橋健夫先生からは、放射線治療を受けることによる患者の心理状態への影響についての調査結果が報告されました。症状の改善の程度を超えて、「治療を受けたこと」での抑うつ状態の改善が認められました。ある程度積極的な症状緩和の手段があることが患者によっては大きな意味を持つことを改めて認識させられた内容でした。
 どの演題も質疑応答含めて15分程度でまとめていただくのが残念なほど充実し示唆に富む内容でした。時間的にタイトな中で、十分に議論が尽くせたとは言えませんが、「放射線治療の適応の広さ、考え方の広さ」だけでも共有できたなら今回のワークショップとしては成功だったのではないかと考えています。
 最後に、忙しい放射線治療の現場にありながら呼びかけに応じて演題応募や学会参加にご協力いただいた少なからぬ日本放射線腫瘍学会の放射線腫瘍医の先生方、並びに会場で熱心に放射線腫瘍医とのディスカッションをしてくださった参加者の皆様に心から感謝します。緩和医療という幅の広い学際的な分野において、関連する専門領域からの情報発信が質の高いチーム医療の提供につながることを期待して座長報告といたします。

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