Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.53
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2011  53
教育講演3
緩和ケアと栄養
座長・報告  北美原クリニック  岡田 晋吾
 緩和ケアの対象となるがん患者に対する栄養管理については悩むことが多い。十分な栄養摂取を進めることで逆に身体的、精神的苦痛を与えてしまうのではないかと疑問を感じることが多い。同じような悩みを持つ会員が多く、会場は超満員であった。東口先生はこの分野の第一人者であり、多くのデータを元にわかりやすく話をしていただいた。
 これまでがん患者の最終的な病状である悪液質に陥ると、代謝機能が悪化して極度の栄養障害をきたして最期のときを迎えるものと考えてきた。しかし、実は終末期になると栄養障害から生じる免疫能の低下によって、がん自体ではなく感染症が直接的な死因となることが多いということが問題であると示された。そしてNST による適正な栄養管理が実践されると終末期がん患者の肺炎をはじめとする種々の感染や多発する褥瘡などの他疾患の合併が減少することも示された。間接熱量計を用いて終末期がん患者の代謝動態を検討した結果、臨床的な悪液質の出現時期とほぼ一致してエネルギー消費量が減少する。この時期がギアチェンジを全面的に実施すべき時期であり、栄養管理法もこの時点から変更すればいいということになる。臨床的な悪液質として「がん進展による高度全身衰弱あるいはコントロール不能な腹水、胸水、全身浮腫の発生」として示された。実際に臨床的な悪液質併発の有無に応じて大きく栄養管理法をギアチェンジすることにより、常に患者の代謝動態に対応した輸液・栄養管理が可能になる。つまりがんの進展に対応して悪液質の併発までは,一般の症例と同様に過不足のないエネルギーや各種栄養素の投与を行い、いったん悪液質が臨床的に明確になったならば、一気にギアチェンジすることによって細胞や各組織レベルでの過剰な水分やエネルギーなどの投与を抑制でき、残されたわずかな身体機能に対する負荷を制御すべきということである。
 最後に終末期がん患者に対するこのような栄養管理は、代謝栄養学的観点からみた“心にも身体にも優しい緩和ケア”の実践にもつながっているということを強調された。

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