Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.52
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2011  52
Journal Club
ヨーロッパの緩和ケアにおける抑うつ症状マネジメントのための
エビデンスに基づくガイドラインの開発
東北大学大学院医学系研究科保健学専攻
緩和ケア看護学分野  清水 恵

Rayner L, Price A, Hotopf M, Higginson IJ. The development of evidence-based European guidelines on the management of depression in palliative cancer care.European Journal of Cancer.2011;47(5): 702-712.

【背景】
 抑うつは特に進行がん患者にとって一般的な症状であり、抑うつ症状は、疼痛の増強、機能障害、短い予後などの身体への悪影響と関連している。European Palliative Care Research Collaborative(EPCRC)では、患者のアウトカムを改善するために、緩和ケア患者の抑うつのマネジメントに関して、ヨーロッパのエビデンスに基づいた臨床ガイドラインを開発した。
【方法】
 開発グループとして、EPCRCの7人、エキスパートグループとして緩和ケアの経験のある専門家29人と患者代表2人が本プロジェクトに参加。ガイドライン開発の手順として、先行研究のシステマティックレビューにより、抑うつに関してのエビデンスの高い項目を収集した。エビデンスの不明確な項目は、デルファイ法により専門家の意見を集約した。挙げられた推奨項目には、世界的に推奨されているプロセスに基づきエビデンスグレードを付与した。
【ガイドラインの内容】
 ガイドラインは主要3セクションからなり、それぞれにおいての推奨事項がエビデンスグレード、推奨度とともに列挙された。
1 予防:
 1)患者中心の、オープンな質の高いコミュニケーションを行う。(エビデンスグレード:中等,推奨度:強く推奨)
 2)患者の希望に沿って、患者に対し、今後の見通しや治療、適切なサポート資源についての情報提供を行う。(中等, 強く推奨)
 3)医療者は、症状の改善や心理社会的サポートのために、緩和ケアの専門家への紹介を検討するべきである。(高い,強く推奨)
2 症状の探索、診断、アセスメント:
 1)医療者は、患者の認知的感情的症状を、身体症状と同等の優先順位としてとらえる(中等,強く推奨)
 2)医療者は、緩和ケア患者に対し抑うつ症状のスクリーニングを実施するべきである(低い,推奨度は低い)
 3)緩和ケア患者の心理的状態は非常に不安定であるため、医療者は常に抑うつ症状をチェックすべきである。(中等,強く推奨)
3 治療:
 1)症状改善、心理的サポートのために、緩和ケアの専門家への紹介を行う。(高い,強く推奨)
 2)抗抑うつ薬の使用を検討する。(高い,強く推奨)
 3)心理学的療法を検討する。(高い,強く推奨)
【コメント】
 ヨーロッパにおける緩和ケア患者の抑うつマネジメントのための、初めての包括的なエビデンスに基づいたガイドラインである。このガイドラインが開発されることで、臨床において、医療者が、素早く、簡単にエビデンスに基づいた知識にアクセスすることができると考えられ、そのことは、患者のアウトカムの改善につながる可能性がある。精神的症状は、文化や社会環境の影響を大きく受けると考えられるため、日本においても本ガイドラインを参考としながら、日本の臨床により即した包括的なガイドラインを検討していく必要がある。

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