Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.52
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2011  52
Journal Club
死亡前6ヶ月間でのがん患者のPerformance Statusと症状の推移
東北大学大学院医学系研究科保健学専攻
緩和ケア看護学分野  佐藤 一樹

Seow H, Barbera L, Sutradhar R, Howell D, Dudgeon D, Atzema C, et al. Trajectory of performance status and symptom scores for patients with cancer during the last six months of life. J Clin Oncol. 2011; 29(9): 1151-8.

【目的】
 がん患者のPerformance Status (PS)と症状の死亡前6ヶ月間での推移を明らかにする。
【方法】
 カナダのオンタリオ州の登録データベースを用い後ろ向き調査を行った。Symptom Management Reporting Databaseは、オンタリオ州の全てのがんセンター(在宅医療提供施設を含む)が参加し、外来受診がん患者のPSと症状等のデータを収集する2007年から開始されたシステムである。PSはPalliative Performance Status (PPS)による0〜100点(0: 死亡)での医療者評価が、症状はEdmonton Symptom Assessment System (ESAS)による9症状の0〜10 (0: 症状なし)での患者評価が登録された。実際には、全受診者の半数程度にアセスメントが実施された。本研究の対象者は、オンタリオ州のがん患者で、2007〜2009年に死亡し、死亡前6ヶ月間にPPSあるいはESASのアセスメントを1回以上受けたものとした。アセスメントから死亡までの日数を1週間ごとに区分し、週別にPPSとESASの平均を算出した。
【結果】
 PPSとESASのアセスメントはそれぞれ7882名と10752名の死亡者に対して行われ(全がん死亡者の約20%)、その場所は外来が75%であった。PPSは、死亡26週前から4週前までに68±14から55±14までほぼ一定に推移し、死亡前1ヶ月間で急激に低下し1週前で41±18であった。ESASの総合スコアは、死亡26週前から4週前までに20±13から28±14までほぼ一定に推移し、死亡前1ヶ月間でより増加し1週前で34±15であった。症状別では、死亡26週前から1週前まで、嘔気(1.1→1.6)・抑うつ(1.8→2.8)・不安(2.1→3.0)・疼痛(2.7→3.6)は変化が少なく、息切れ(2.2→3.8)・傾眠(2.6→5.7)・食欲不振(3.3→6.4)・健康感(3.6→5.7)・倦怠感(4.1→6,9)は比較的増加した。死亡前1ヶ月間に、1/3以上の患者が息切れ・疼痛・不安・抑うつ症状を中程度以上(4/10以上)有し、2/3以上の患者が倦怠感・食欲不振・傾眠・健康感症状を中程度以上有していた。
【結論】
 がん患者の症状の死亡前6ヶ月間の推移では増加を示す症状と比較的一定な症状と2パターンが示され、後者は対症療法の効果が考えられた。
【コメント】
 地域のがん患者を代表できる大規模サンプルであり、同一患者の縦断調査ではないものの貴重な知見である。原著者も言及したように、終末期に症状が増加するばかりでなかったことは注目に値する。オンタリオ州ではがん対策がその評価を含めて組織的に行われており、わが国でも同様のシステム構築が求められる。なお、論文中には中程度以上の症状と患者背景との関連も検討されていた。

Close