Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.52
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2011  52
Journal Club
米国退役軍人病院における遺族調査による通常ケア、
緩和ケアチーム、緩和ケア病棟のアウトカムの比較
東北大学大学院医学系研究科保健学専攻 緩和ケア看護学分野  宮下 光令

Casarett D, Johnson M, Smith D, Richardson D.The optimal delivery of palliative care: a national comparison of the outcomes of consultation teams vs inpatient units.Arch Intern Med 2011;171(7):649-655.

【目的】
 緩和ケアがコンサルテーション型の緩和ケアチームと緩和ケア病棟のどちらで提供されることが患者にとって最適であるかを遺族調査から明らかにする。
【方法】
 コンサルテーション型緩和ケアチームもしくは緩和ケア病棟を有する77の退役軍人病院において2008年7月から2009年12月に調査が実施された。死亡退院した遺族が電話によるインタビューを受けた。評価項目は死亡前の1カ月間に受けたケアについて全般的評価1項目と9の細項目である。
【結果】
 9546人の患者に対し5901人の遺族へのインタビューが実施された(62%)。そのうち1873人が通常ケア、1549人が緩和ケアチーム、2479人が緩和ケア病棟によるケアを受けた。非回答者の重みづけ分析および傾向スコアによる調整を行った結果、緩和ケアチームのケアを受けた患者の遺族は通常ケアの遺族に対して「excellent」と回答した割合が高かった(調整済みの割合:51% vs 46%: OR=1.25 95%CI 1.02-1.55: P=0.02)。しかし、緩和ケア病棟でケアを受けた患者は緩和ケアチームと比較して更に「excellent」と回答した割合が高かった(63% vs 53%: OR=1.52 95%CI 1.25-1.85: P<0.001)。
【結論】
 コンサルテーション型緩和ケアチームと比較して緩和ケア病棟でケアを受けることはより望ましい緩和ケアの提供方法かもしれない。
【コメント】
 本研究の1つの特徴は通常ケア、緩和ケアチーム、緩和ケア病棟の遺族調査の結果を比較する際に傾向スコアを用いて得点を調整していることである。本研究の結果の解釈には米国の医療制度や緩和ケアの体制をよく理解しないと難しい。例えば日本では緩和ケア病棟でケアを受ける患者と院内緩和ケアチームでケアを受ける患者は緩和ケア病棟に対する希望、治療に対する姿勢、予後告知や受け入れなど多くの背景要因が存在する。残念ながら私は米国によるこれらの事情がわからないため正確な解釈は難しい。傾向スコアによる調整も不十分であろう。しかしながら、本研究の1つの成果は緩和ケアチームの通常ケアに対する優位性を遺族調査から確認した点にある。著者らのグループは同様の結果を既に何度か発表しているが、これで新たなエビデンスが加えられた。この点に関しては日本ではまだ検証されていない(若干の検証はあるが明確な差は見られなかった)。また緩和ケア病棟の緩和ケアチームに対する優位性を示したことも成果である。日本におけるJ-HOPE研究の結果に比べると緩和ケア病棟の優位性は米国では小さかった。日本における今までの研究では緩和ケア病棟の方が緩和ケアチームより圧倒的に得点が高かった。これらから推測すると米国では緩和ケアチームによるケアの質が日本より高い可能性があるかもしれない。

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