Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.52
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2011  52
Journal Club
緩和ケアを受けるがん患者が心配に思っていることの調査
聖隷三方原病院 ホスピス科  鄭 陽

Baile WF, Palmer JL, Bruera E,et al. Assessment of palliative care cancer patients’ most important concerns. Support Care Cancer 2011;19(4):475-481.

【目的】
 本研究の目的は以下の4つである:1)緩和ケア外来に通う患者がどんな心配事を抱いているかを評価する、2)患者の心配事を緩和ケア医がどのように評価しているかを調べる、3)患者と緩和ケア医の間での評価が一致するかどうかを評価する、4)患者たちの心配事とつらさの程度の相関を評価する。
【方法】
 緩和ケア外来へ来院した患者で、1)18歳以上、2)がんの診断、3)英語能力がある、4)認知機能低下がない、5)参加同意を得ている、のすべてを満たすものを対象とした。対象患者は診察前に、the Concerns Checklist (CCL), Hospital Anxiety and Depression Scale (HADS)を記入した。診察後、医師は患者との診察中の対話に基づいて医師版CCLを記入した。CCLの11項目それぞれに関して患者と医師の一致率をκ値により評価し、κ値>0.60を一致しているとみなした。
【結果】
 137人の参加者があり、患者背景は、平均年齢 60.9歳、男性55%、結婚もしくは同居者がいる人 65%、大学もしくは専門学校卒以上が67%であった。患者の心配事としては、(1)今まで通りの活動ができなくなること、(2)将来のこと、(3)自分自身の身の回りのケア、の数値が高かった。一方、(1)他者からの十分な支援がないこと、(2)スピリチュアル/宗教的な問題、はあまり心配に思っていなかった。HADSの平均値は、不安下位尺度 (HADS-A) 6.9 (SD 4.2)、抑うつ下位尺度 (HADS-D) 7.0 (SD 4.1)であった。HADS-A 、HADS-Dそれぞれ8点以上だったのは、全体の42%、44%だった。
 医師がとらえている患者の心配事は、(1)将来のこと、(2)今まで通りの活動ができなくなること、(3)治療のこと、の数値が高かった。一方、医師は、(1)性生活、(2)スピリチュアル/宗教的な問題、に関しては患者の心配事としては高くないと考えていた。CLL各項目の平均値では、医師は、患者自身が考えているよりも、すべての項目で患者の心配が強いと捉えており、数値の一致率は低かった(最大κ=0.26)。HADS-A、HADS-Dが高いほど心配の程度も高い傾向も示された。
【結論】
 患者の心配事についての認識に関して、患者と医師の間には重大な乖離が存在する。また、心配事が多い患者では不安や抑うつ症状が強いことが示された。患者の心配事を正確に捕える方法を開発する必要がある。
【コメント】
 今回の研究では、医師が患者の心配事を過大評価していることが示された。しかしながら、これまでの報告では医師による過小評価が問題となっており、今後の追試が必要と考えられる。大抵において医師の過大評価になっているのは、実際にどうかよりも、より強く関心を示すことが大事と医師が考えているだろうことが推測される。また、その他に、1)普段よく使っているように「困っていることはありますか?」と聞くと、答える側のハードルが高く表出されないのではないか、2)一度に尋ねても、何かひとつ大きな問題が解決されないと次の心配事も出にくい、3)医療者が「関心を示す」ことははできても、それに対して「対応する方法」にミスマッチが出るというコミュニケーションの問題、4)患者が職種によって伝える内容を使い分けている、5)個別性を反映できるような質問紙ではない、ということが要因として考えられた。医師は、患者のつらさを医療チーム内の他者へ伝えていく大事な役割を担っており、チームを有効に利用していくうえでも、患者の心配事やつらさを正確に見分ける能力が必要である。

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