Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.51
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2011  51
学会印象記
第25回日本がん看護学会
名古屋大学医学部附属病院 がん看護専門看護師  原(石本)万里子
 2011年2月12日〜13日に神戸で開催された第25回日本がん看護学会に参加した。
 今回は「がん看護が創る未来への架け橋」をテーマに、最新の放射線治療や化学療法と副作用対策、緩和ケアやがん看護外来、遺伝子治療、アメリカのがん看護などが講演内容としてあげられていた。私は特に「オーダーメイド医療」と、「社会復帰へ架ける橋〜仕事とがんの療養生活の両立を支える〜」にこの学会のテーマを感じた。
 オーダーメイド医療により、家族や子孫にどのようなリスクが起きるだろうか、同じがんなのにあの人と治療が違うのはなぜだろうなど、遺伝子検査を受けたがん患者が抱える不安に対するケアが必要であることを学んだ。またがんサバイバーでもあるジャーナリストの立花隆氏の講演では、自身の闘病生活や友人もがんで失った体験をもとにがんの起源を取材し、抗がん剤をすればするほどがんは耐性をもつのが必然的で、終末期にはがん患者はCureよりCareを必要としているとメッセージをいただいた。
 一方、不景気の中で仕事をしながら治療費を払うことの困難な現状と、術後にがんリハビリテーションを行いながら社会復帰を果たしている人たちの事例も知り得た。「仕事と療養生活の両立を支える」ために、社会の法制度や企業の人事管理などの改善が必要であることや、まずはがん患者自身も“自律”するための援助がこれからは重要であることを実感した。
 また学会の講演の随所で“意思決定を支える医療者の関わり方”という視点が含まれていたと感じる。がん患者・家族は未来が不確かな中にあり、結局は医療者の提案に従うしかない現状がある。その際医療チームと患者・家族がどのように合意形成していくかを考えることが自分自身の課題ともなった。
 このように、ヒトゲノムレベルでのがん治療によって「人間の生命を時間的に長らえる」ことができることが未来への希望となる。一方がん医療が発達はしたものの、その治療を受けるための患者一人一人の価値観や倫理的問題、社会的問題など、「個々の人間の生命の価値、意味」という視点も忘れてはならない。がん看護が創りだすケアが未来のがん医療の発展に及ぼす影響は大きいと感じられた。余談だが、私は終末期の患者・家族の療養の質を高めるための看護援助に示唆を得られた研究(「終末期がん患者を在宅で介護する家族にもたらされるEnrichment」)において、学術奨励賞を授与させていただいた。ここで見出されたケアの視点をこれからの実践の根幹としていきたいと強く思うことができ、非常に印象深い学会となった。

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