Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.51
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2011  51
Journal Club
終末期がん患者のステロイド誘発性音楽性幻聴は
ステロイドの変更によって改善するか
ガラシア病院 ホスピス  金村 誠哲

Kanemura S, Tanimukai H, Tsuneto S. Can “steroid switching” improve steroid-induced musical hallucinations in a patient with terminal cancer? J Palliat Med. 2010;13(12): 1495-1498.

【目的】
 ステロイドにより誘発された音楽性幻聴の患者を症例報告する
【方法】
 症例報告
【結果】
 57歳女性
 診断:悪性胸膜中皮腫
 既往:40歳頃、不安神経症。耳鼻科疾患の既往は 認めず。
 職業:ピアノ教師
 入院1日目、原疾患の進行による呼吸困難と喘鳴に対してベタメタゾン2mg/日を開始したところ、症状の緩和が認められた。入院3日目より、子どもやオペラの歌声が聞こえるという音楽性幻聴が発症した。この音楽性幻聴は一回数分続き、昼夜問わず1日10回程度であった。患者の認知機能障害はみられず、音楽性幻聴の既往もなかった。呼吸困難と喘鳴は落ち着いていたため、入院7日目にベタメタゾンを1mg/日へ減量した。しかし、音楽性幻聴は持続していたため、入院11日目にベタメタゾンをプレドニゾロン10mg/日へ変更した。その後も呼吸器症状は落ち着いており、音楽性幻聴は持続していたため、入院15日目にプレドニゾロンを5mg/日に減量、入院24日目に中止したところ、入院22日目頃より音楽性幻聴は徐々に軽減し、入院29日目に完全に消失した。
 入院40日目、再度呼吸困難が増悪したため、プレドニゾロン5mg/日を開始したところ、症状は改善し、音楽性幻聴も認めなかった。しかし、入院51日目に再度呼吸困難が増悪したため、患者と相談の上、リンデロン4mg/日へ変更したところ、症状は更に改善するも、音楽性幻聴が再発した。その後、薬剤を変更することなく、音楽性幻聴は4?5日後に自然に消失し、その後再発することなく病状の進行により患者は永眠した。
【考察】
 音楽性幻聴の原因は不明であるが、リスクファクターとして、高齢、女性、耳鼻科疾患、精神疾患、薬剤などが報告されており、音楽教育歴との関連は明らかではない。今回の症例では、一連の経過より音楽性幻聴の発症にベタメタゾンの関与が最も疑われるが、同じステロイドでもプレドニゾロンでは発症しなかった。
【結論】
 ステロイドにより誘発された音楽性幻聴がその種類の変更により改善する可能性がある。

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