家族の心理に及ぼす影響についての調査研究
Takuya Shinjo, Tatsuya Morita, Kei Hirai, Mitsunori Miyashita, Kazuki Sato, Satoru Tsuneto, and Yasuo Shima. Who pronounced the patient’s death? A study of the experience of bereaved Japanese families in palliative care units. Palliat Care Res 2010; 5(2): 162-170.
【目的】
本研究は、主治医が終末期がん患者の死亡確認を行うことや臨終に立ち会うことが、家族のつらさと医師の対応への改善の必要性に影響するかを明らかにすることである。加えて、看護師が臨終に立ち会うことや、心電図モニター使用が、家族の心理的なつらさと医師や看護師の対応についての、改善の必要性に影響するかも検討した。
【方法】
2007年、95のホスピス・緩和ケア病棟の遺族670名を対象に質問紙調査を行った。The Japan Hospice and Palliative Care Evaluation(J-HOPE) Studyの一部である。「臨終前後のできごとは、あなたにとってはどのくらいつらく感じられましたか?」(1:「まったくつらくなかった」―5:「とてもつらかった」の5件法、つらさ)を設定した。さらに「臨終前後の医師や看護師の対応は、あなたからみてどの程度改善が必要と感じられましたか?」(1:「改善の必要はない」―4:「改善の必要な点が非常にある」の4件法、改善の必要性)を質問した。
【結果】
全体の73%の遺族が回答した。患者が臨終の時、医師が「部屋にいた」と回答した遺族は20%であった。どの医師が死亡確認を行うか、医師が臨終に立ち会ったかは家族のつらさとは関連がなかった。一方、死亡確認と立ち会いは、医師の対応への改善の必要性とは有意な関連があった。しかし、医師が「臨終に立ち会ったこと」と、「立ち会えなかったが、その日は頻繁に部屋に来ていた」ことの間には、医師の対応への改善の必要度に有意差はなかった。患者が臨終の時、看護師が「部屋にいた」と回答した遺族は41%であった。看護師も医師と同様の結果であった。患者に心電図モニターをつけていなかったと返答した遺族が、73%であった。心電図モニターの有無は、つらさとも改善の必要性とも関連がなかった。
【結論】
家族は主治医の死亡確認や、臨終の立ち会いを望んでいるが、もし死亡確認や立ち会いができなかったとしても、心理的なつらさが強まることはなく、臨終までに頻繁に部屋に行くことで十分な対応であると考えていることが示唆された。