Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.51
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2011  51
Journal Club
看護師による正確な疼痛評価を行うための関連要因のコホート研究
東北大学大学院医学系研究科保健学専攻 緩和ケア看護学分野
花田 芙蓉子

Nursing Staff, Patient, and Environmental Factors Associated with Accurate Pain Assessment. Lisa R. Shugarman, Joy R. Goebel, Andy Lanto, Steven M. Asch, Cathy D. Sherbourne, Martin L. Lee, Lisa V. Rubenstein, Li Wen, Lisa Meredith, Karl A. Lorenz J Pain Symptom Manage 2010; 40(5): 723-733.

【目的】
 医療者による定期的な疼痛の評価はしばしば不正確である。本研究の目的は、看護師による疼痛評価と患者による疼痛評価の不一致の関連要因を調査することである。
【方法】
 2006年3月〜2007年3月の間に退役軍人病院もしくは連携施設の外来を受診した成人患者と、当該施設に勤務している看護師を対象とした。看護師には患者の外来診察前に疼痛評価をバイタル測定と同時に行ってもらい、これを看護師の疼痛評価(N-NRS)とした。外来受診後には調査担当者が患者にNRSにて疼痛評価を行い、これを患者の疼痛評価(S-NRS)とし、N-NRSからS-NRSを引いた値が+2以上であれば過大評価とし、N-NRSからS-NRSを引いた値が−2以下であれば過小評価とし、これを主要評価項目とした。
【結果】
 調査期間中の対象施設の外来受診患者数は5667名で、適格基準を満たしたのは783名、調査を実施できたのは528名であった。看護師は対象となった155名中145名が調査を実施し、患者と看護師をマッチングさせた結果、患者476名看護師94名が解析対象となった。患者は平均61.3歳で9割が男性、筋骨格系疾患が45.4%、循環器系が26%、がんが11.2%であった。疼痛評価では、過小評価が25%、過大評価が7%であった。看護師の約半数はNRSではないインフォーマルな方法で疼痛評価を行っていた。過小評価の関連要因の分析では、看護師がインフォーマルな方法で疼痛評価を行っていることや看護師の臨床経験年数が多いこと、患者に不安やPTSDがあることで過小評価が起こりやすく、患者の健康状態が良好であることで過小評価が起こりにくいことが示された。一方、過大評価の関連要因の分析では、NRSの正式な方法で評価していたことや気が散る環境で患者のバイタルサイン測定行っていたことで過大評価が起こりやすいことが示された。
【結論】
 実際の臨床ではインフォーマルな方法で疼痛評価が実施されており、疼痛の過小評価は4人に1人の患者で起きていることが示され、その関連要因として看護師の経験年数や患者の心理状態があげられた。
【コメント】
 本研究結果により、アメリカの退役軍人病院においては半数近い看護師が疼痛評価をインフォーマルな方法で実施しており、それには臨床経験を積み重ねていること等が関連していることが示された。疼痛の評価は治療による効果を判定するだけでなく、患者のQOLを評価するためにも重要な指標である。臨床において看護師が正確な疼痛評価を行うためには、NRSなどの統一された評価指標を普段から用いることの重要性を裏付けた研究結果であるといえる。

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