Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.50
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2011  50
Journal Club
終末期がん患者における感染症治療の有用性
神戸学院大学薬学部  中川 左理

Nakagawa S, Toya Y, Okamoto Y, Tsuneto S, Goya S, Tanimukai H, Matsuda Y, Ohno Y, Eto H, Tsugane M, Takagi T, Uejima E. Can anti-infective drugs improve the infection-related symptoms of patients with cancer during the terminal stages of their lives? J Palliat Med. 2010 May;13(5):535-40.

【目的】
 がん患者は、原疾患、低栄養状態、あるいは治療による骨髄抑制などにより、感染のリスクが高く、感染症に罹患し感染症治療薬を使用する場合が多い。終末期がん患者における感染症治療薬使用の実態を明らかにし、その効果に影響を及ぼす因子について検討した。
【方法】
 大阪大学医学部附属病院において、2006年1月から12月までに、死亡したがん患者を対象に、死亡日から遡ること90日間における、レトロスペクティブなカルテ調査を実施した。
【結果】
 対象患者は111名で、感染症治療薬が投与された患者は71名(64%)、投与された回数は326 episodesであった。投与目的が、感染症予防もしくは不明であった87 episodesを除外し、感染症治療もしくは感染症疑いで投与された239 episodesについて、細菌学的検査データを調べた。99検体(41.4%、43名)が陽性であり、感染部位は呼吸器131 episodes (39.7%)、消化管43 episodes (13.0%)、尿路20 episodes (6.1%)などであった。使用された治療薬の系統は、第3世代セファロスポリン(17.8%)、カルバマゼピン(17.5%)、ニューキノロン (11.3%)などであった。1 episodeあたりの平均投与期間は9.6±17.4 days、投与経路は、経口が59 episodes (18.1%)、注射が267 episodes (81.9%) であった。全episode中、症状改善に至ったのは、33.1%(79/239 episodes)であった。治療歴(化学療法、放射線療法、外科手術)がある患者やカテーテル留置のある患者を治療群とし、症状改善率を調べたところ、治療群 (19.4%)は、非治療群(41.8%)より有意に低く(p=0.0024)、特に、外科手術を行った群(p=0.0097)、カテーテル留置群(p=0.027)において、症状改善率が低いことが明らかとなった。
【結論】
 終末期がん患者において、6割を超える患者に感染症治療薬が処方されており、その6割で原因菌が検出されておらず、効果の改善がみられたのは3割に過ぎなかった。広域スペクトルの治療薬が使用されており、投与期間が長く、注射剤の使用頻度が高い傾向にあった。死亡前90日間に行われる治療、外科手術やカテーテル留置が、感染症症状の改善に影響を及ぼすことが明らかとなった。
【コメント】
 本研究は、我が国における終末期がん患者の感染症治療に関する初めて報告である。侵襲的な治療によるQOLへの影響を十分に考慮し、不必要で過剰な治療は避け、患者の意思を尊重した症状緩和を行うべきである。

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