Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.50
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2011  50
Journal Club
外来化学療法中のがん患者の倦怠感と睡眠障害に対する「エネルギーと睡眠増進」介入の効果
東北大学大学院医学系研究科保健学専攻 緩和ケア看護学分野
花田 芙蓉子

Andrea Barsevick, Susan L. Beck, William N. Dudley, Bob Wong, Ann M. Berger, Kyra Whitmer, Tracey Newhall, Susan Brown, Katie Stewart. Efficacy of an Intervention for Fatigue and Sleep Disturbance During Cancer Chemotherapy. J Pain Symptom Manage 2010; 40(2): 200-216

【目的】
 外来化学療法中の患者の倦怠感と睡眠障害を軽減し健康関連機能を改善するため、「エネルギーと睡眠増進」(energy and sleep enhancement: 以下EASE)介入を行い、その効果を明らかにする。
【方法】
 対象者は乳癌・肺癌・結腸直腸癌・前立腺癌・婦人科癌・膀胱癌・精巣癌・悪性リンパ腫で、外来化学療法開始予定の18歳以上の患者とした。対象者はEASE介入群(n=153)と対照群(n=139)に無作為に割り付けられ、EASE介入群では、がん専門看護師が対象者へ倦怠感と睡眠障害について3回の電話指導を行った。1回目は化学療法開始から1週間後に、倦怠感と睡眠障害の症状の性質、原因、パターンについて情報提供を行い、症状について日記をつけるよう指導した。2回目は化学療法開始から2週間後、日記をもとに倦怠感に対するエネルギー保存療法と睡眠に対するセルフケア方法の指導を行い、3回目は化学療法開始から3週間後にセルフケアについて自己評価を行った。対照群に対しては、栄養についての電話指導を同様に3回行った。介入による主要評価項目は倦怠感(GFS、POMS-F)、睡眠障害(PSQI)、健康状態(SF-12-P、SF-12-M)で、副次的評価項目は疼痛(BPI)と抑うつ(POMS-D)とし、化学療法開始前と開始後4日目、開始後43〜60日目に各々の化学療法の治療サイクルに合わせてそれぞれ測定した。
【結果】
 対象者は主に女性(82%)で、平均年齢53.9歳、抗がん治療は化学療法のみが95%であった。倦怠感(GFS)や睡眠障害(PSQI)は、治療開始後4日目と開始後43〜60日目を比較すると、両群とも増加していた。身体機能(SF-12-P)は両群とも低下していたが、精神機能(SF-12-M)は標準範囲であった。反復測定分散分析では、倦怠感(GFS、POMS-F)、睡眠障害(PSQI)、身体機能(SF-12-P)に介入による有意差はなかった(それぞれP=0.22、P=0.26、P=0.05、P=0.84)。
【結論】
 今回のEASE介入では、外来化学療法中のがん患者の倦怠感や睡眠障害に効果がなかった。
【コメント】
 EASE介入は、倦怠感や睡眠障害を改善することを目的としてエネルギー保存療法や睡眠のセルフケア方法を指導するものである。倦怠感に対するエネルギー保存療法としては、自分のペースで行動し、時にはエネルギーを使用する行動に優先順位をつけること、睡眠に対するセルフケア方法としては、リラクゼーション方法を使用し、睡眠開始時と起床後に行うこと、日中に定期的に運動することなどを指導する。本研究では介入による効果は示されなかったが、本研究の著者であるAndrea Barsevick氏は、2004年にがんによる倦怠感に対しエネルギー保存療法を本研究と同様に電話指導するRCTの有効性を報告している(Andrea Barsevick, et al. Cancer. 2004;100(6):1302-10)。著者らは先行研究と今回の研究の相違点として、先行研究では比較的倦怠感が軽度である放射線療法のみの患者が44%を占めていたため介入の効果が表れやすかったこと、2004年から現在まで治療薬の開発等により化学療法のレジメンはより多様化し症状も複雑化しているため2004年当時と同じ介入内容では不十分であったこと、先行研究では倦怠感のみに焦点を当てていたが本研究では睡眠障害も含めていたため対象者が生活の中に取り入れるには負荷が大きかったこと等を挙げている。しかし倦怠感や睡眠障害は患者の生活に支障を及ぼす症状であり、化学療法の発展とともにその副作用も年々複雑化している現在、より生活の中に取り入れやすくより効果の高い新たな介入方法の検討が必要である。また、エネルギー保存療法は前述したように先行研究において有効性を示しており、今後さらなる検証を行い、化学療法中のがん患者の倦怠感軽減の可能性に期待したい。

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