Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.50
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2011  50
Journal Club
難治性呼吸困難感をもつ患者に対する緩和的酸素療法の効果:酸素と空気を比較した無作為化二重盲検比較試験
東北大学大学院医学系研究科保健学専攻 がん看護分野・緩和ケア看護学分野
有永 洋子

Abernethy AP, McDonald CF, Frith PA, Clark K, Herndon II JE, Marcello J, Young IH, Bull J, Wilcock A, Booth S, Wheeler JL, Tulsky JA, Crockett AJ, Currow DC. ‘Effect of palliative oxygen versus room air in relief of breathlessness in patients with refractory dyspnoea: a double-blind, randomised controlled trial’. Lancet 2010; 376(9743) : 784?93

【目的】
 終末期患者の呼吸困難感に酸素濃縮器を使用して酸素もしくは空気を経鼻カヌラで投与し、その効果を比較する。
【方法】
 豪国、米国、英国の外来9施設において、致死性疾患で難治性呼吸困難感があり、PaO?7.3kPa(54.9mmHg)以上の成人患者を対象に無作為化二重盲検比較試験を行った。対象者は1:1の比で経鼻カヌラ酸素(2?)群と経鼻カヌラ空気群に無作為に割り付けられた。対象者は1日15時間以上カヌラ吸入を行うように指導された。主要評価項目は「現在の呼吸困難感(0-10点のNRS)」で朝と夜の1日2回、酸素濃縮器を設置する2日前〜設置6日後まで測定し、NRSが1点以上減少すれば臨床的に有効と判断した。
【結果】
 239名(酸素群:120名、空気群:119名)が無作為に割り付けられ、試験を完遂したのは酸素群112名(93%)、空気群99名(83%)であった。朝の呼吸困難感の変化の平均はベースラインから6日目までで酸素群-0.9点、空気群-0.7点で有意な差を認めなかった(p=0.504)。夜の呼吸困難感の変化の平均は酸素群-0.3点、空気群-0.5点で同じく有意な差を認めなかった(p=0.554)。副作用の頻度も群間で差はなかった。強度の眠気を訴えたのは酸素群116名中12名(10%)、空気群108名中14名(13%)であった。強度の鼻腔不快感を訴えたのは酸素群2名(2%)、空気群7名(6%)であった。酸素群で1名が強度の鼻出血を訴えた。
【コメント】
 終末期患者の難治性呼吸困難感に対して、緩和的酸素療法は広く使用されているが、今回の研究で経鼻酸素と空気のみの経鼻投与を比較した結果、有効性と有害事象ともに有意差はなかった。酸素量2?という用量が十分であったかどうかは不明であるが、これ以上の容量で吸入すると有害事象が増える可能性があるため限界の一つであろう。
 また、今回の対象者の大半はCOPDであり、がん患者は20%以下であったため、がん患者への適用については完全に明らかになったとは言えない。これまでの緩和的酸素療法に関する研究は多くが小規模で研究方法に問題があるものが多かった。現在の段階では緩和的酸素療法の有効性は明確ではないため、個々の患者にとって最も負担が少なく効果的な方法を選択していく必要性が示唆される。

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