Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.50
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2011  50
Journal Club
死亡場所とがん患者の終末期のQOLや遺族の精神障害の関連
東北大学大学院医学係研究科保健学専攻 緩和ケア看護学分野
佐藤 一樹

Wright AA, Keating NL, Balboni TA, Matulonis UA, Block SD, Prigerson HG. Place of death: correlations with quality of life of patients with cancer and predictors of bereaved caregivers' mental health. J Clin Oncol. 2010; 28(29): 4457-64.

【背景】
 死亡場所による、進行がん患者の終末期のQOLや遺族の精神障害の違いを明らかにする。
【方法】
 Coping with Cancerという、終末期がん患者とその介護者を対象とした精神障害に関するコホート研究を行った。対象者は、米国の外来7施設を2002年から2008年に受診した進行がん患者とその家族718組のうち、2008年までに在宅または病院で死亡した333組とした。調査は、患者と介護者のインタビュー調査(ベースライン)、カルテ調査(ベースラインと死別後)、遺族調査(死別2週後と6ヶ月後)を行った。測定項目は、終末期患者のQOLとして、患者の死亡前1週間での全般的QOL、身体的苦痛、精神的苦痛の遺族による評価を11-NRSで尋ねた(死別2週後)。介護者の精神健康として、精神障害を診断する構造化面接(SCID)と予期悲嘆と病的悲嘆の評価尺度であるProlonged Grief Disorder (PGD) scaleを尋ねた(ベースラインと死別6ヶ月後)。
【結果】
 患者の死亡場所は、ホスピスケアを受けた在宅(在宅緩和)195名(58.6%)、ホスピスケアを受けなかった在宅(一般在宅)25名(7.5%)、病院85名(25.5%)、ICU28名(8.4%)であった。
 終末期がん患者のアウトカム評価の死亡場所による比較(患者背景等で調整)では、終末期の全般的QOLの平均は、在宅緩和(6.6)や一般在宅(7.3)で高く、病院(5.3)やICU(5.0)で低かった(p=.003)。身体的安楽の平均は、在宅緩和(6.6)、一般在宅(5.9)、病院(4.7)、ICU(3.6)の順であった(p <.0001)。精神的安寧は、在宅緩和(7.0)や一般在宅(8.0)より病院(6.0)やICU(6.0)は低かった(p=.02)。
 死亡場所による遺族のアウトカム評価(遺族背景やベースライン値等で調整)では、PTSDは、在宅緩和と比較してICUで多かった(OR=5.0, p=.02)。遷延性悲嘆は、在宅緩和と比較して病院で多かった(OR=8.8, p=.02)。全般性不安障害、パニック障害、大うつ病では、死亡場所別での有意差はみられなかった。
【結論】
 病院やICUで死亡したがん患者は、在宅で死亡した患者と比較して、終末期のQOLが悪く、遺族の精神障害のリスクが高かった。終末期の病院利用抑制やホスピス利用増加を目指す介入が、患者のQOLや遺族の精神障害改善のために有用かもしれない。
【コメント】
 死亡場所による患者・家族アウトカムを比較した研究は多くはないがいくつかあり、日本でも横断調査であるが世界でも最大規模の遺族調査を行ったJ-HOPE studyがある。本研究が貴重な点は、終末期患者のQOLや遺族の精神障害を死亡場所別に前向きに評価したこと、遺族の精神障害をSCIDを用いて評価したことであろう。ただし、死亡場所と遺族の精神障害との関連の解釈には注意が必要である。今回診断した精神障害の有病率は1.7%〜10.6%であり、死亡場所別の検討を行うには特にICUでサンプル数が少なすぎる。今後、より大規模な追試験による検討が行われることが期待される。

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