Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.50
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2011  50
Journal Club
中央管理された電話ベースの症状マネジメントはがん患者の疼痛と抑うつを軽減する:無作為化比較試験
東北大学大学院医学系研究科保健学専攻 緩和ケア看護学分野
宮下 光令

Effect of Telecare Management on Pain and Depression in Patients With Cancer: A Randomized Trial Kroenke K, Theobald D, Wu J, Norton K, Morrison G, Carpenter J, Tu W. JAMA. 2010; 304(2): 163-171.

【目的】
 疼痛と抑うつはがん患者に高頻度でみられる治療可能な症状であるが、しばしば見過ごされており十分な治療もされていない。本研究では自動的な症状モニタリングを伴う電話ベースの症状マネジメントが、がん患者の疼痛と抑うつを改善するか無作為化比較試験で検討した。
【方法】
 Indiana Cancer Pain and Depression(INCPAD)trialと名付けられた無作為化比較試験がインディアナ州の16の都市部から田舎までの幅広いがん治療のセッティングで行われた。対象は2006年3月から2008年8月にエントリーされ、2009年8月までフォローされた。適格基準は抑うつがPHQ-9で10点以上または疼痛がBPIの最悪値で6以上であった。202人が介入群、203人が通常ケア群に割りつけられた。介入群の患者は中央管理された電話ベースの症状マネジメントを、看護師が中心となり医師と協働するチームから受けた。患者は家庭で双方向的な音声録音またはインターネットを用いた症状の自動的モニタリングを受けた。主要評価項目は抑うつ(Hopkins Symptom Checklist: HSCL-20)と疼痛(Brief Pain Inventory: BPI)であり、1、3、6、12カ月後に盲検化されてデータ収集された。
【結果】
 405人が参加し、131人が抑うつのみ、96人が疼痛のみ、178人が両方の症状を持っていた。疼痛を有していた274人の患者のうち、介入群では12カ月後の疼痛の重症度(連続尺度)および疼痛改善割合(BPIで30%以上の減少)の両方で対照群に比べ有意に改善した(P=0.001)。抑うつを有していた309人の患者のうち、介入群では12カ月後のHSCL-20の重症度(連続尺度)および抑うつ改善割合(HSCLのスコアが50%の減少)の両方で対照群に比べ有意に改善した(P=0.001)。3か月と6カ月後の臨床的効果量(エフェクトサイズ)は疼痛では0.67、0.39であり、抑うつでは0.42、0.41であった。
【結論】
 本研究で実施された中央管理された電話ベースの症状マネジメントはがん患者の疼痛と抑うつを統計的・臨床的に有意に軽減した。
【コメント】
 本研究は広い地域に居住し、異なる医療機関で診療を受けているがん患者に対し、一か所の中央マネジメントシステムによる電話介入などにより対照群と比べ高い割合で疼痛と抑うつを改善したことに意義がある。電話介入はトレーニングされた看護師によって行われ、治療のプロトコルは先行研究やガイドラインに基づき研究班が作成したものを、研究参加施設の医師に推奨として配布された(おそらく対照群もそれに基づき治療を受けたと思われる)。自動的な症状モニタリングシステムの構築は多少手間がかかるが、電話介入だけでもある程度の意味がある可能性はある。日本では緩和ケアの専門家が少なく緩和ケア外来と一般診療科の並診も進んでいない。日本では緩和ケアの専門家は容易には増えないであろうし、全国をカバーするのは難しいだろう。従って、このようにある地域内で中央管理による緩和ケアに熟練した看護師および医師などのチームにより患者の症状をマネジメントするシステムを構築することは大変意義がある試みになる可能性がある。著者らは本研究の費用対効果についても現在検討中のようなので、その結果も興味深い。

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