Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.49
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2010  49
Journal Club
自閉症の膵臓がん患者に対する臨床心理士の介入
八尾市立病院 がん相談支援センター  長井 直子

長井直子、橋本和彦、井澤初美、山田智子、本多紀子、内藤敦、井谷裕香、佐々木洋.自閉症の膵臓がん患者に対する臨床心理士の介入.Palliative Care Research Vol. 5 (2010) , No. 2 pp.323-326

【緒言】
 自閉症とは、アメリカ精神医学の診断分類であるDSM-W-TRに示されているように、3歳以前に始まる対人的相互反応における質的な障害、コミュニケーションの質的な障害、行動、興味および活動の限定された反復的で常同的な様式を特徴とした障害である。
 医療現場においては、自閉症をはじめとした様々な精神障害に対する理解が十分であるとは言えない。今回、自閉症と診断されている膵臓がん患者に対する臨床心理士介入が有用であった症例を経験したため報告する。
【症例】
 患者:40歳代 女性
 家族構成:父、母、患者の3人暮らしで家族関係は良好であった。
 病歴:他院より紹介入院となり、 当院にて膵頭十二指腸切除術を施行した。術後経過良好にて一旦退院したが、食事摂取不良にて再入院となった。精査の結果、膵臓がんの再発およびがん性腹膜炎と診断し、以後緩和ケアを行った。自閉症の診断は、3歳前後に受けていた。
 経過:当初、基礎疾患に自閉症を有することで医療者と患者、家族間の相互理解の困難さが予想されたため、臨床心理士が介入した。介入後、障害が周術期にどのような影響を与えるか検討したところ、医療者側に徐々に自閉症に対する認識が深まり、患者の個別性に配慮したケアを行うことができた。
 患者、家族に対しては、臨床心理士が個別面接を繰り返し、家族以外の理解者となるよう受容、共感的に支える関わりを継続したことで、患者、家族の不安が軽減した。
【結語】
 臨床心理士の介入が、患者、家族の精神的安定およびスタッフ教育に一定の効果をもたらした。また多職種が連携することで精神面にも配慮したよりよいチーム医療の実践が可能であることが明らかとなった。

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