Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.49
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2010  49
Journal Club
オピオイド抵抗性の前立腺がん骨転移痛にケタミンが著効し
長期在宅療養可能となった1例
松原アーバンクリニック  大津 秀一

大津秀一.オピオイド抵抗性の前立腺がん骨転移痛にケタミンが著効し長期在宅療養可能となった1例.Palliative Care Research Vol.5 (2010), No.2 pp.317-322

 ケタミンを在宅で長期間にわたって使用して、前立腺がんの難治性骨転移痛を緩和している症例について報告する。
 症例は50歳代、男性。前立腺がん、骨盤骨転移。骨盤部・両股部・両大腿の安静時鈍痛(numeric rating scale<以下NRS>3)及び体動時の激しい骨盤部・腰背部痛(NRS10)を認めた。前医で硬膜外カテーテルからの塩酸モルヒネ80mg/dayの投与、2度の放射線療法、ロキソプロフェン・デキサメタゾン・クロナゼパムの内服、ゾレドロネートの点滴静注などの集学的治療を受けていたが、特に体動時痛が顕著だった。
 疼痛緩和及び在宅移行目的で当院へ紹介転院となった。ガバペンチンを開始し安静時痛の改善を認めるも体動時痛の緩和は不十分であった。患者・家族と相談し、適応外使用であることや副作用について十分説明したうえで、ケタミンを60mg/dayの持続皮下注射で開始した。5日間でケタミンを180mg/dayまで漸次増量したところ、体動時痛が改善し、 硬膜外からのモルヒネを25.6mg/day(在宅移行後は19.2mg/day)まで減量できた。ケタミン投与による副作用は認めなかった。疼痛が改善したため在宅移行が可能となり、約200日以上長期在宅療養している。経過中ケタミンの皮下投与部の発赤を認めたが、薬液にベタメタゾンを混注して対応した。定期往診は週2回行い、硬膜外カテーテルからの薬液(塩酸モルヒネ等)は週2回、皮下からの薬液(ケタミン等)は週1回の頻度で医師が薬液バッグを交換している。古い薬液バッグ内の麻薬注射剤の残液廃棄については他の職員1名の立会いのもと放流して破棄している。
 ケタミンは2007年1月より麻薬指定となり、以前と比較して使用する際の煩雑さが増したものの、難治性のオピオイド抵抗性疼痛をもち、集学的治療でも改善が乏しい患者にとって、重要な役割を担っていると考えられる。ケタミンの持続皮下注射は、本症例のように在宅でも施行可能であることから、在宅加療を見据えた難治性疼痛治療の選択肢の1つとして考慮されてよい治療と考えられた。

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